ドクター転職ショートストーリー

医者の給料なんてこんなもの!?(下)

2004年09月15日 コンサルタントI

そこで、「2段階プラン」をT先生に提案することにした。まず、現在の勤務先と同じような立地で、かつ同規模の急性期病院である某病院を紹介する。T先生もこの病院についてはよく知っており、勤務条件がどのようなものか興味はあった様子。私が10年目常勤医の年棒が1,800万と伝えるなり、「こんなにもらえるものなんですか?1.5倍じゃないですか!」と、驚かれた。早速面談を設定したところ、院長曰く「ウチは忙しいですよ。ただ、先生が働いてくれた分、しっかり給料はお支払いしますよ」。さらりとしたものである。そのためT先生は、「給与面では大幅アップ」ということだけしか印象に残らなかったのだろう、面談を終えて「まあ給料も上がることだし、これ以上の贅沢は言えませんよね。この病院にお世話になろうかな……」と、つぶやいた。しかし、決して晴れ晴れとした顔でないのは、私の目にも明らかだった。

 もちろん私の本意はそこにはなく、ここでW病院の登場となる。こちらは30床ちょっとの小さな病院で、オペ数も少ない。しかし、面接のとき院長が開口一番、「T先生はずいぶん長く勉強されてきたのですね。ウチはあなたのような先生に外科をお任せしたかったんですよ」と、T先生の苦労をねぎらうかのように言った。面談を終えるやいなや、T先生は「W病院に決めます。世間の相場がどうこうよりも、今までがんばってきたことを素直に評価してもらえることの方が、私も嬉しい」と、力強くおっしゃった。
そう、院長の言葉はT先生の「安い給料で長い間こき使われてきた」というネガティブな意識を、「いや、それは長い間しっかりと勉強する時間を経験してきたのだ」という、ポジティブな意識に変えたのである。
 「W病院で患者を増やしていきたいと思います。自分の力で病院を忙しくするのも、医者としての評価ですからね」とおっしゃるT先生。その中に、初めてお会いした時には見られなかった「熱意」が宿っているのを感じ、うれしくなった瞬間であった。

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