指導医の苦悩(上)
2005年11月01日 コンサルタントS
関西の某私立医大出身消化器内科医のY先生。臨床研修制度前の典型的な経歴の持ち主で、卒業後は大学の医局に入局し、いくつかの関連病院での勤務を経て10年目の昨春、大学病院へ呼び戻された。年収はおおよそ1200万円。勤務内容の割りに少ないかな、という気持ちはあったようだが別に不満というわけではなかった。それよりも臨床研修制度がスタートした昨年春からの勤務内容に大きな不満を抱いていた。臨床と研究、そして教育。大学病院に課せられた3つの機能、どれをとっても大切な機能であることは先生自身十分過ぎる程理解していた。しかし、どうしても自分の中で解決出来ずに残されていたのは臨床研修制度必修化後の教育する側と教育を受ける側との意識のギャップの問題であった。ご自身が研修医だった頃は長時間の勤務や雑用など当たり前だった。しかし、定められた研修プログラムに則り、定められた期間を過ごす現在の制度では研修医の意識に大きな差が在るのは明らかで、指導医として教育に当たれば当たるほど何のための教育か、という疑問が湧いてくるのだった。
またもう一つ、これまでの10年の臨床を経てご自身の将来像として「消化器内科医」というより「一般内科医」として患者さんを全人的に診られる医師になりたいという希望が沸々と沸いていた。臓器別に専門分化された大学病院にこのまま勤務し続ける理由を、先生ご自身の中に見つけられなくなっていた。
患者さんを全人的に…、といっても幅が広い。新たに身に付けたい臨床能力は何か。先生の中にあったのは「糖尿病を診たい」ということ。その理由は、先生の奥様が1型の糖尿病を患っており、ご自身で奥様を診てあげたいという思いにあった。