麻酔科医の苦悩
2006年03月01日 コンサルタントT
四国にある国立のA大学を卒業後、医局には属さず、同じく四国の中にある急性期病院であるB病院に研修医、レジデントとして計5年間の修練を積み、現在は大学に復帰し600床クラスの関連病院で勤務する12年目の麻酔科医C先生。
度重なる真夜中・早朝の呼び出しに緊急手術…C先生の身体は疲弊し切っていた。
常勤麻酔科医が8名いるものの、病院の方針上、手術件数は増すばかり、実際C先生の負担も他の常勤医に比べて大きく、超過勤務が月に100時間を越えることも度々あった。現在の年収である1,500万円は申し分ない、しかしその内の6割が超過勤務手当てなのである。
最近になって報道で目にするようになった「麻酔科医不足」の文字。
ふとC先生の頭に不安がよぎった。「今後これ以上激務を強いられるのだろうか」
これが私と初めて会った時に語ってくださった胸の内である。
C先生が真っ先に口にしたご希望は「夜間当直・オンコール共になし」だった。
私は正直戸惑いを覚えた。何故なら麻酔科医にとってそういった勤務は必要不可欠なものだと認識していたからだ。「先生の望みを叶えてあげられるだろうか」そしてもう一つC先生の要望は「患者との接点をもっと持ちたい」という事であった。オペ室中心の生活で、患者と直接話す機会が少ない事に不満を抱いていたのである。
私は、多少なりとも手術を行っているクライアントの病院全てに当たってみた。そのうち比較的手術件数が少ないD病院をC先生に紹介することにした。D病院には、私から先生のご希望などについて話をさせて頂き、確実に先生が息を抜ける時間を作ってもらえるよう交渉しオンコールを週1回はして頂くものの、他の曜日ついては非常勤で確実に対応する旨を約束して頂いた。また、先生が希望すれば「ペイン外来」を開設しても良いという条件もとりつけた。
「今よりも負担が減るのであれば構わない、対応できる範囲で麻酔科医としての任務は果たしたい」
そうしてC先生の熱心さと人柄を買われ、超過勤務手当は別途で年俸1,700万円という提示を受けることとなった。
最終的にC先生はD病院に入職を決めた。勤務条件・年俸が先生の希望通りたった事と「ペイン外来」を開設する事が条件に盛り込まれた為である。最後に「ありがとう」と言ってくれた先生の笑顔がとても印象に残った。4月からC先生の新しいステージが始まる。今後のC先生の活躍にエールを送りたい。
完