ドクター転職ショートストーリー

外科医の転職(下)

2006年04月15日 コンサルタントS

 しかし、あくまで外科医として臨床に携わるという誇りは捨てずにいたい、症例を重ねて更なるスキルアップを図りたいというご希望だけは、変わることはなかった。
外科、という科目の特性上、チーム医療が必要不可欠で医局から離れることが決して良いことばかりではなく、手術が一部の病院に集まる昨今では症例を重ねるという観点からは大切な一面も持ち合わせている。A先生の強いご希望である「スキルアップ」を叶えるにはどのような病院をご紹介させて頂くか悩んだ。
そんな時、以前から麻酔科医の求人を頂いていた400床クラスのB病院の院長先生とお話をさせて頂いた。B病院は民間の急性期病院で外科に関しては院長先生のご出身である国立大学からの派遣で十分な人員を確保していた。ただ、話を進めていく中で院長先生は今後もずっと大学からの派遣でやっていけるとはお考えになっておらず、良い医師であれば採用を考えていかないといけない、というご意見をお持ちだった。A先生のお話をしてみると「一度お会いさせて頂いてお話だけでもできないか」と言われた。

早速、A先生に連絡し、ご面談の機会を設けた。症例数が飛びぬけて多く、電車で乗り換えもなく30分という通勤時間、最新の医療機器も取り揃えており、鏡視下手術を始めとする様々な手技を指導する医師も多数勤務していてB病院に不満はない。唯一気になったのは、仲間に入れてもらえるかどうか、だった。

それに関しては、当日院長から外科部長や他の外科医とお会いさせて頂き、一緒に働けるという手ごたえをつかんでもらえたようであった。

 

給与面については、1200万円。当直は週1回別手当てでもらえる、という提示に対して先生は2つ返事でOKをされ、春の人事を待ち、業務の引継ぎを終える初夏の入職と決まった。
今でも、面接の帰りに先生が仰った言葉が忘れられない。
「医局という枠から抜け出し、これからは、自分の納得した環境で医療に携われるのかと思うと、迷いは一切ない。あの病院で働ける日が本当に待ち遠しい。」
リンクスタッフに依頼をして良かった、と静かに微笑まれた。

自らを変えていくのは、現状に妥協しない強い意思と決断する勇気だ。
しかし、独りでは迷いや不安もあり、その一歩がなかなか踏み出せずにいる方は大勢いるだろう。その後押しをし、支えとなるのが私たちの役目だ。
転職という大きな転機に立ち会い、微力ながらもお力添えができるというこの仕事を、とても誇りに思う。

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