科目連携でより良い医療を
2006年05月01日 コンサルタントK
都内の某大学関連病院に消化器内科医として勤める、35歳のA先生。勤務先では医師不足によって過重勤務が求められた。ご自身の目指す医療に程遠いうえ、いつ医療ミスがおきてもおかしくない状況との事だった。先生は再三大学に応援を要請したが、新たな医師派遣はなく、逆に医師を引きあげる方向だという。こうした体制に疑問を抱いた先生は、ついに医局を離れる決意をしたのだった。
A先生は3つの条件を提示された。
「医師の勤務体制に無理が無い事」「外科との連携がしっかりしている事」「職員の離職率が低い事」である。医師・看護師の平均勤続年数、検査数と手術数の比較、当直・オンコール体制等を調査して、最終的にK病院・N病院の2つに絞り面接を組んだ。
両院とも、あらかじめ面接時に外科医師の同席を頼んでいたお陰で、内科との連携に関して生の声を聞く事が出来た。K病院は、内科・外科とも連携がとれており、問題点は無いとの事で、終始笑いが絶えない面接となった。
しかしN病院で同席した外科の先生は、徐々に内科との連携における問題点を正直に話し始めた。その上でA先生の力を是非借りたい、先生の目指す医療を一緒にやっていきたいと力説したのだ。私は先生に即答を控えていただき、返事まで1週間の時間をもらった。
最終的にA先生はN病院を選択した。科目連携を本気でやりたいという外科医に、心打たれたのである。「N病院に入職した場合、あの外科の先生とは間違いなく衝突するでしょう。しかし目的は同じであり、目線が常に患者の方を向いているところに共感しました。N病院で働きたいです」先生は力強く話してくれた。年俸も1,200万円から1,600万円にアップした。
私自身かなりの面接を経験してきたが、得てして問題点はオブラートに包む病院が多い。それをあえてさらけ出したN病院の勇気は、高く評価できると思う。A先生の今後の活躍に心からエールを送りたい。
完