再出発
2006年06月15日 コンサルタントK
公的な病院や企業などで働く医師にとっては必ず「定年」がやってくる。
私が担当したM先生は関西の国立大学を卒業され、大学で消化器内科医としてご活躍されたのち、大学の紹介で大阪の公立病院に就職された。そして、定年を来年に控え、定年後に備えて再就職先を探していた。
面談した際の先生の印象はとても定年を控えた年齢とは見えず、近頃はもっぱら療養病棟を任されているとのことだったが、まだまだ意欲的に働く事が出来る、という雰囲気を感じた。
M先生の希望としては「完全な療養型病院でのんびりと勤務して、第二の人生を歩んで行きたい」ということだった。
当初「ゆとり勤務」の病院を紹介するつもりだったが、私が先生との面談時に受けた印象からあえて都内にあるS病院を打診した。
この病院は病床のほとんどが療養病床で、わずかにある一般病床もいわゆる一般急性期病床とは違い、半療養病床とも言うべきもので、ほぼ完全療養型病院であった。
しかし今年の診療報酬制度改正の煽りを受けて、外来を強化し、それに伴い今まで半療養のような形で扱っていた一般病床に重傷度の高い患者を入院させていく、という方針を打ち出していた。
病院にM先生のことを話したところ,是非一度会ってみたいので面接を組んで欲しいということになった。
私はそのような事情も含めて先生にお話をしたところ、外来も近頃はあまり診ていないことと一般病棟からは遠ざかっていた事から二の足を踏んでいたが、話だけでもということで面接に行くことになった。
面接時、院長先生や現在働いている医師、看護部長と話していくうちに先生は昔を思い出したように生き生きとしてきた。
そしてなんと面接中に双方で入職という合意に達した。
面接での帰り道に先生にその訳を聞くと,病院の印象や働いている方々、そして何よりまだまだ自分は一線で働く事ができるということを認識させてくれた事です、ということだった。
条件としては、今まで週5日で1,400万円だった年俸が週4日で1,500万円。当直も無く、診療の方針などについても先生の意向が大きく認められた。
「療養病床を持つ勤務が長くなった為にそれに慣れてしまっていたが、自分のやりたいことというのは純粋にそれだけではないのだと気付きました。
今までの経験も活かすことが出来,これから病院を変えていく事にやりがいも感じます。最高の病院を紹介して頂きました」と後に先生から連絡を頂いた時は、最初の面談時に感じた先生の第一印象が間違っていなかったことを確信した。
先生の第二の人生が充実する様、心からエールを送りたい。
完