大学病院での勤務中に考えたこと(下)
2007年01月01日 コンサルタントA
面接当日は、私を含め理事長との三者での面談になる。J先生も面談の際、つつみ隠さず大学病院での現状を話された。すると、理事長より「私も35年外科をしているので良く分かる。先生の考えられた事は医師であれば当然に考える事であり、考えなくてはいけない事。患者に何かあってからでは遅い。」と、大変理解のあるお言葉を頂けた。
結局、ペインクリニックの管理者としての雇用で、手術麻酔は週に1日のみ。緊急手術などの当番日(オンコール)も週に1日という、大学病院での勤務に比べ、非常にONとOFFのはっきりする勤務体系で、年俸も現状から600万アップの1800万を提示された。J先生は、十分に希望がかなえられたことに、大変満足されていた。後は、医局を退局するのみである。一番最後であり、一番の難関と通常なら考えるのだが、今回は違った。J先生の気持ちが、完全に固まっていたのである。
A病院との細かい条件面の折衝も済み、当社も含めた三者間の雇用契約書も作成させて頂いた。この時点で、教授には何も話していないとの事だったが、「全く心配は要りません、辞めると意思表示するだけですから。」と、力強いお言葉。いつかの面談の際にもらされた言葉が、嘘のようである。
退局願いを出したJ先生は、直属の教授から『今辞められたら困る、勤務体系も考慮するし給与の良い関連民間病院へ行って、体を休めてほしい。』と、予想通りの引き止めにあう。しかし、J先生は「もう決めた事ですし、辞めるといってから言われても、不信感しか生まれません。」と、きっぱり意思表示された。これで話は終わったとの事。
私も色々な先生の転職のお手伝いをさせて頂いたが、こんなに簡単に退局の話が終わったケースは、久しぶりである。通常、二ヶ月や三ヶ月かけて、三度も四度も話をされる。入職が延期になってしまうなんて事もある。今回は、長かった大学病院での勤務中に、ずっと考えられていた事だった為、決まってからは何を言われても揺るがなかったのであろう。
ドクターにとって、働き方を見直す時期は少なからずあるのではないだろうか。それが開業であれ転職であれ、転機は必ず来ると思う。先生より「やはり私の人生だから私なりに良く考えたい、今回は本当に人生を見つめなおす良い転機になりました。本当にありがとうございました。」と言葉に出して喜んで頂けたことが、私にとっては嬉しい一件であった。今後のJ先生のご活躍を祈念するばかりである。
完