ドクター転職ショートストーリー

ドリーム・カム・ツルー(上)

2007年03月15日 コンサルタントT

 P先生は46歳、関東圏の国立大学を卒業後、医局人事で総合病院、救命救急センターなどの勤務をされていた。先生は、「今の状況で仕事を続けていても体力も続かないし、子供の教育費なども考えると、給与面でも不満が残る。また、大阪に一人で住んでいる母親も高齢のため傍にいてやりたい。」というお気持ちを、弊社に電話でご相談になった。早速、私の自己紹介もかねて先生とご面談の機会を設けることになった。

 実際にお会いすると、誠実さがにじみ出たようなお人柄で、小学生と幼稚園に通うお子様が2人おられること、自分の将来の夢は郊外の町で、地域に密着したクリニックを営んでみたいということをお話いただいた。そもそも、医師を志したのは先生のかかりつけの医師であった、ご実家付近の診療所の院長先生に対する憧れからであった。この院長先生は誰からも慕われ、いつでも優しく、病気のこと以外でも何でも相談にのってくれる人望の厚い方であったとのこと。そこで、私はP先生に勤務医の仕事の紹介より、“雇われ院長”の求人を提案することにした。

 それから数日後、近畿地区にある医療法人が新しくクリニックをオープンされることになり、その院長職の求人を頂戴した。

 早速、夏休みで帰阪されていたP先生に連絡を取りこの求人案件の説明もかね、既に完成していたクリニックの建物の見学にP先生といっしょに現地に赴いた。その建物は、JRの駅から徒歩で5分くらいの新興住宅地の中に立地し、エントランスには、あたかも新しい主を迎えるかのように赤い花が時折吹く風にゆれていた。すぐ近所には大型商業施設の開発予定地が広がり、いずれ多くの人々がここに訪れるであろうことを予感させていた。
この建物を一目見るなり、P先生は自分の夢が現実へと近づく予感を感じられたのか、私に「ここなら駅からも近いし、新興住宅街なのでこれから人口も増えていくだろうから将来性もある。」と言われた。近所を散策してみると、駅前にオープン仕立てのメディカルビルがあったが、歯科と整形外科、耳鼻咽喉科がテナントで入っているだけであった。先生は「近所に一般内科を標榜しているところも無いし、これは願ったり叶ったりの求人案件だ。是非とも応募したい。」と目を輝かせて言われた。

早速、事務長に電話を入れP先生との面談の機会を与えていただくことになった。

次へ続く

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