ドクター転職ショートストーリー

議論(上)

2007年05月15日 コンサルタントT

 Y先生と初めて会ったのは、クリスマスソングが流れる寒い日だった。Y先生は開口一番「外科医に復帰したい」と私に訴えた。

Y先生は43歳で、地方の国立大学を卒業され消化器外科医として大学病院・関連病院で活躍されたのち、2年前に家庭の事情で都内の民間病院に就職され現在に至っている。

 現在の病院では、外科とは名ばかりであり、外科医はY先生1名で、オペもほとんど無く、実質内科としての仕事が中心であった。ただ、残業・当直も無く、休みもしっかり取れる環境でもあった。

 Y先生が現在の病院に就職した事情とは、Y先生のお母様が病気で倒れ、奥様とともに介護をしなくてはならなかったのだ。

 その後、お二人の介護がみのりお母様は日常生活が支障無くすごせるまで回復された。そして、Y先生はもう一度外科医としての人生をまっとうしたいと考えたのである。

 Y先生の条件は、急性期の総合病院でオンコールに対応する為車で30分以内の場所である事・学閥がない事・常勤の麻酔科医がいる事・内科との連携がしっかりしている事の4点であった。

 給与に関しては、特に気にしないと話された。私はY先生の医師として考え方に感銘を受けた一方、ご家族の協力がないとこの転職は成功しないと考え、もう一度、奥様を交えた3人での面談の機会をY先生にお願いした。

  そして最初の面談から3日後、Y先生と奥様を交えた3者面談の機会を得た。

 奥様は元看護師であり、急性期病院での外科医の仕事が激務である事は十分理解していた。そして、Y先生の体を気遣い当直はなるべく少なくして欲しいとの要望がでた。

 また、年俸に関しても、気にしないと話されるY先生とは意見が異なり、現状維持が最低条件となった。私は「お二人の条件をみたす病院を必ず紹介します」と約束をして面談を終えた。

次へ続く

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