『仕事と介護』(下)
2007年12月01日 コンサルタントO
いよいよ、面接当日がやってきた。H先生と待合せ、病院へ向かった。受付で来意を告げると、理事長室に案内された。
部屋では理事長、院長、事務長が既に待っておられ、早速面接が始まった。H先生は3人を前にしても、私との面談で見せた様な不安げな様子もなく堂々と今までの経験、スキルを話された。
H先生のお話を聞かれた後、院長先生は、現在は皮膚科の標榜はしていないが必要性がある事、健診センターでは女性の受診者が多く、女医の必要性を強く感じておられることなどを熱く語られた。
そして、理事長、院長から「先生の希望勤務条件の調整は必要ですが、是非、当院に来ていただきたい。」とのお言葉をいただき、後日条件提示をいただく約束をし、最後に事務長の案内で院内施設見学をさせていただき、面接を終了した。事務長もH先生を大変気に入られ、帰り際に、「最初は健診センターで勤務され、時間的に余裕が出来たら病棟、外来にも携わっていただけるよう、院長に提案させていただきます。」とおっしゃられた。「宜しくお願いいたします」と答えたH先生の笑顔溢れる表情が印象的であった。
翌日、事務長から電話をいただき、「面接時のお話から察するに、H先生は健診センターより外来、病棟管理勤務をご希望なのではないですか?」と言われた。私は「面接時に先生がお話された通り、母親の介護があり、時間的な制約が大きいので通常の外来・病棟業務は厳しいと思いますが、その点も含めてご配慮いただけるのであれば、事務長のおっしゃるとおりです。」とお答えした。
それから2日後、病院側から給与と勤務条件の回答が文書で届いた。内容は、常勤勤務で一般内科として採用、健診センター配属、将来的には病院の外来、病棟管理お任せしたい、というものであった。さらに、先生のご事情には最大限の配慮をさせていただきますので、生涯当院でご勤務をお願い出来ませんか?との添書きまでついていた。具体的には、年俸は当直なしで1,350万、勤務時間は週32時間をクリアしていただくことを条件に、先生のご希望勤務体系をご自分で作成してもらって構わない、という私の予想以上の好条件であった。早速、直接H先生に伝えたく、再度面談を設定させていただいた。
給与、条件を提示すると、H先生は驚きを隠せない表情で「週32時間勤務で常勤扱いしていただき、また1,350万円もいただけるなんて嘘みたいです」と興奮した口調でおっしゃられた。
最終的に、先生の勤務は、月曜日から土曜日で32時間をご自分で毎月調整していただく事、母親の介護をしていただける方が居る時は長時間勤務していただき、その分他の曜日を研究日として使える事を契約内容に盛り込み、H先生の入職が無事決まった。
後日、事務長より、H先生を常勤で採用したのは、非常勤だと有給、年末年始の休暇等の社内規定が適用出来ない為、H先生のスキルと経験を十分に評価した理事長の配慮ですとこっそり教えていただいた。
H先生であれば、医師の仕事と母親の介護をしっかり両立させていかれることと思います。今後のH先生のますますのご活躍を心からお祈り申し上げます。
完