ドクター転職ショートストーリー

『災害医療への情熱』(下)

2008年02月15日 コンサルタントI

 JR鹿児島本線のとある駅で待ち合わせをしたが、既に11月初旬になっていた。K先生と最初に会った日の暑さが嘘のような爽やかな日だった。K先生から「歩いていきましょう」と誘われ、駅から徒歩20分ほどの道のりを雑談しながら向かった。
 病院に着くと、早速事務長が出てこられ、そのまま応接室へと案内された。
 事務長はK先生をご覧になって、「イメージしていた方と随分印象が違いますね」とおっしゃり、K先生も「よく言われます」との返事をされた。しばらくして院長が入室され、面接が始まった。
 大学医局のこと、勤務されてきた病院のこと、そして医療スキルなどの質問があったが、K先生は例の大きな声で答えられていた。最後に海外派遣のことでは、院長が様々な視点から深くお尋ねになって、面接は無事終了した。
 2時間以上の時間が経過し、外はもう薄暗くなっていた。帰りは事務長が駅まで送ると申し出てくださったが、丁寧にお断りし、また二人で歩いて駅まで戻った。

 K先生は、病院に好印象を持たれ、「この病院で働きたい」と意思を明確に表明された。しかし病院側は、この日の段階では海外派遣について言葉を濁していたので、「ここからがコンサルタントの仕事だ」という思いから、「私の方で決着させます」とお約束して、駅でK先生とは別れた。

 翌日の夕方、事務長に連絡したところ「採用します」との返事を頂いた。「人物については申し分ないし、海外派遣にそれだけの気概を持っている人であれば、こちらにいるときにも十分な診療をしてくれるはず」と事務長が院長を説得されたそうだ。年収も1700万と高条件でご提示いただけた。
 現在、K先生はその病院で勤務されている。患者さんからの評判も良いらしく、「本当に良い先生を紹介してくれてありがとう」と事務長に感謝して頂いた。

 コンサルタントをしていると様々なドクターにお会いするが、それぞれのドクターがポリシーを持って働かれており、夢を描かれている。それらを十分に聞くということも我々の仕事だと改めて考えさせられた一件であった。
 地震などの災害は当然に起こってほしくはない。しかし、万が一自分が巻き込まれたとしても、こういう災害医療に熱い思いをもたれている先生がいることを、私は一生忘れないだろう。
 今後のK先生のご活躍を祈念するばかりである。

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