ドクター転職ショートストーリー

コンサルタントに必要なもの(上)

2008年04月15日 コンサルタントK

 それは昨年の冬の夜、一本の電話から始まった。
 「Mと申しますが・・・。北九州の病院を探してほしいのですが。」とても疲れた声で話された。M先生は九州の国立大学をご卒業の47歳。消化器内科がご専門で、妻と小学生の子供が3人いるとの事だが、孤独とあせりで悩まれている様子だった。

 詳しく話を聞いてみると、今年の初めに業者の紹介で病院に転職したが自分が思い描いた病院と違うという事らしい。なにはともあれ、一度お会いしましょうと訪問の日時を決め電話を置いた。M先生のお勤めの病院は、九州の中部に位置しているが都市部より車で3時間かかる場所にある。数日後、福岡市を車で出発して4時間位かかって当地に着いた。M先生のご勤務が終わるのを待ち、近くのファミリーレストランで面談することになった。「こんな所まで来てくれてありがとう。」と話された顔は、疲れきった様子であった。

 奥様は病弱であるので騒がしくない所、子供には自然豊かな環境で育てたいとの事でこの地にある病院を選ばれた。当初は単身赴任で行き、落ち着いたら家族を呼び寄せる計画だったが、それ以前に療養病床のみの病院を選んだのが失敗でしたと話された。

 M先生は、北九州市の一般病院で外来から病棟管理までやっており、また内視鏡の指導医の資格まで持たれている経験豊かなドクターである。家族のことを思い、子供の入学の時期等のこともあり、気のみ焦ってあまり考えもせず、ケアミックスの病院で療養病床の患者も診ていた事があるので大丈夫であろう、と業者の推薦する病院を選んだとの事だ。

 「療養型の病院であることはもちろんわかって入りましたが、私の認識不足でした。ここでは私のスキルを活かすことは出来ない。10年来るのが早かったようです。このままでは自分のスキルが落ちてしまいそうで不安になります。」療養型の病院が担う役割をドクターが理解していなかったという事が信じられず、私は思い切って、「先生は本当はわかっていたけれども、環境と楽な勤務で年俸1,800万円ももらえる、という事に重きを置かれたのでしょう?でも働き始めてやっぱり物足りない・・・と。それは仕方の無い話ではないですか?」と話した。

 M先生は、「そうかもしれない」と力なく返事をされ、「解っていたけど何もない環境での単身赴任、大切な子供に会えないのが一番辛い。家族に会いたくて週末に家に帰ろうとしても、片道4時間以上もかかる。それに加えての仕事の物足りなさ。ここにいる事が精神的に辛くなってしまったのです。」と続けて答えられた。

 「我々コンサルタントは、転職先を見つけるのが仕事ですが、その前に先生が病院探しで優先するのは何か。場所なのか、給与なのか、診療内容なのかをはっきりさせて下さい。」と話して、先生と別れた。

次へ続く

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