ドクター転職ショートストーリー

外科医として活きる(下)

2008年12月1日 コンサルタントM

初めてお会いしたときのT先生の相談内容は「とにかく自分自身が習得した技術を活かせる病院を探してほしい」「給料面や勤務日数などは二の次でいいです」などと、かなりストレスが溜まっている様子で、「ただ受験を控えた子どもがいます。子どもには充実した教育環境を与えたいので、今回の転職を契機に関東で勤務したい」ということであった。
私は診療科目の面からも、T先生のお人柄からも、転職先の病院はすぐ見つかるであろうと思った。しかし、タイミングが悪かったのか、懸命に探しても簡単には見つからず、T先生になかなかご紹介できない。東京近郊の高度医療機関は充足している傾向が強く、候補施設が定まらない状態で2カ月程経ってしまった。

T先生の奥様も勤務先が決まらないことには子どもさんの受験先の選択もできないと心配していらっしゃるという。「妻から『単身赴任も考えてくださいね!』と毎日せっつかれています」と、T先生からの問い合わせの電話があるたびに、私はなかなか案内できず頭を抱えていたが、いろいろなところに相談をしあらゆる手を尽くしていた。
そこへ、以前非常勤の定期勤務先をご紹介したF先生から電話があった。内容は「現在の勤務体系に少し余裕ができたので、土曜日の当直案件を探して下さい」ということであった。その電話の中でF先生から「そういえば、うちの病院の整形外科の先生が留学することになって、新任の先生を探さなくてはと事務長が言っていましたから、一度連絡してみてはどうですか」という情報を得た。

その病院はつい1カ月程前に整形外科の医師募集について連絡したが、充足していると言われた病院であった。早速、その病院の事務長に連絡をしたところ、「ちょうど良かった、整形外科の先生が抜けることになって、急遽募集しなくてはいけない状況になったんだよ」と願ってもいない話であった。

しかし、その病院は大学との強い繋がりがあり、T先生を入職させるにはその大学との調整が最大の問題で、どうにかしなくてはならないという。それでも「T先生と一度お会いして、話を聞いてみましょう」ということになり、直接院長先生に、面接して頂くことになった。

院長先生は「整形外科をさらに充実させて、リハビリテーションの病床を増加する計画を予定しており、以前から整形外科医の派遣を大学に要請をしているのだが、大学側の人員的な問題もあり、なかなか思うようにはなっていない」と現状を説明してくださった上で、「T先生が内科から整形外科へ転科した経緯を伺いますと、努力して身につけた手技を活かせないのはもったいない、何とかしてみましょう」と言ってくださった。
そして院長先生が自ら大学と交渉し、大学との関係は引き続き保ちつつ、今回のみ特別に一般公募での採用を認めて頂く了承を得た。年収に関しては、四国の病院で1800万だったところが、1500万円に下がる結果となったが、T先生の「とにかく自分自身が習得した技術を活かせる病院を探してほしい」というご要望には答えられ、「ありがとうございます。本当に満足しています。新天地で家族共々がんばります。」と、ありがたい言葉までいただけた。

その後、T先生は多忙の日々を送られていたが、ある日電話を頂き、「今は自ら望んだ仕事ができる喜びを実感している。残念ながら、当面はお世話になることはないと思いますが、若くない体なので限界を感じたときはあなたにまた電話させてもらいますよ」とおっしゃった。コンサルタントとして、何より嬉しい瞬間である。またこのような瞬間を迎えられるよう、一層頑張っていきたいと思う。

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