分岐点での決意(下)
2009年6月1日 コンサルタントS
翌日、早速Tリハビリテーション病院のO事務長に連絡し、K先生の経歴を送った。
病院側が検討された結果、「これだけの経歴のある先生であれば、リハビリの経験がなくても是非お会いしたい。あとはコミュニケーション能力ですね」と返答いただき、面接及び見学日を設定した。
当日、O事務長はK先生に会うなり、一目で気に入った様子で、概要や業務内容について熱のこもった説明を始められた。K先生も来院患者数や、どのような疾患が多いかなど多くの質問をぶつけ、関心の高さをうかがわせた。
院内見学ではPTやOTによる実際のリハビリ風景などはもちろん、介護が必要な患者様にどのように対応しているのか等を、現場のコメディカルの方々に質問し、一つ一つ疑問を解消しておられた様子であった。その他、O事務長より当直室や処置室、職員向けの食堂の案内まで行われ、受け入れ準備が万全であることを窺わせた。
K先生が一番気にしておられたリハビリ未経験については、院内見学の際に途中から案内に参加いただいた50歳代の神経内科の女性医師からの「精一杯協力しますので、是非ここで一緒に頑張りましょう」の一言で吹っ切れたようだった。
私はそんな様子を見ながら、K先生のコミュニケーション能力の高さに改めて感心しつつその日の見学を終えた。
とても良い笑顔で病院を後にしたK先生と、改めてお茶を飲みながら話をした。
私はてっきり「ここに決めます」との返事がいただけるものかと思ったが、K先生は「もし、急性期医療に戻りたくなったらどうしましょう」とおっしゃった。
考えてみれば当然である。これまで整形外科医として急性期医療に20年近く携わってきたのである。不安だらけに違いないし、ご自分の考えが変わることもあり得る。元々は終末期医療の方面まで考えていたのだ。しかし、そういった不安はある程度予想できていたので、事前にO事務長に確認していたことを伝えた。
実は、Tリハビリテーション病院は同系列に急性期病院を持っており、その病院からの患者様をメインに受け入れる病院でもある。もし心変わりがあればその急性期病院への異動も可能であるし、週1日の研究日に、その急性期病院に非常勤医師として勤務し、整形外科医としてのスキルを維持できることを説明したところ、「それならば」と安心いただいた。
他の回復期に特化した病院の紹介も、念のためK先生にお話したが、ほとんどの回復期病院が療養型病院と似通っている現状をお話し、整形外科医としてのスキル維持を念頭に置いた上での転職であれば、Tリハビリテーション病院がベストな選択であることを先生にお奨めし、納得をいただいた。
後日、O事務長より連絡があり、K先生のコミュニケーション能力の高さや、リハビリ未経験でありながらも、非常に高い関心があることなどを踏まえて、正式に病院側から雇用条件を提示された。K先生は経済的な理由で転職するのではないので、整形外科医としては非常に控えめな年俸1,400万円を希望されていたが、Tリハビリテーション病院からは週4.5日、年俸1,650万円、当直なしの条件が提示された。K先生も満足され、入職の意思をいただき、無事入職へと至った。
現状に疲弊し、プライオリティーが定まらず終末期医療への道を選ぼうとしていたK先生に、病院の紹介だけでなく、新たなキャリアへの道筋を紹介出来たことが今回の大きな収穫だった。
完