ドクター転職ショートストーリー

存在意義(下)

2010年3月1日 コンサルタントS

私のやるべきことは決まっていた。今まで以上にスピードを上げ、且つ危機感を持って、I先生のご希望に沿う案件の獲得、つまり医療機関へのアプローチを継続して行うことだ。
数日後、I先生の希望条件に合う求人を獲得することができた。そのA病院は高齢者層の増加が進む地域にあり、高齢者への医療・介護サービスに主眼を置き、入院患者や介護サービス利用者一人一人にしっかりと向き合いながら、内科診療及び精神的ケアなどを提供している。A病院での勤務条件は、I先生のご希望とほぼ合致した。ネックは公共の交通機関からA病院までのアクセスが悪いという点であったが、交渉の結果、最寄りの駅からはA病院の職員が送迎をしてくださるという確認も取れた。

既にB病院で面接を終えられているI先生にA病院の求人を提案し、並行してご検討いただけないか依頼した。「A病院からは一度I先生にお会いしたいと言われています。選択肢が増えれば、I先生のご希望される条件に沿う医療機関が見つかる可能性が増えます。A病院はI先生のご希望にほぼ合致していますので宜しくお願いいたします」と言い、I先生に医療施設の概要、業務内容、条件面も合わせて説明をした。I先生からは「分かりました。検討します」とのお返事をいただいた。
条件面ではI先生の知人の紹介によるB病院より勝るという自信はあったが、縦、横の繋がりを重視する医師の世界のことを考えると、むしろ劣勢である気がした。私としてはI先生の「検討する」という言葉を信じて待つしかなかった。

「検討する」と言っていただいた翌日、I先生から連絡が入り、面接を承諾してくださった。喜んだ半面、私にはこれまでになく緊張感漂う時間が訪れようとしていた。
そして、いよいよ面接開始。私の心情とは裏腹に、面接中はパワフルなA病院の理事とそれを包み込むようなI先生のやり取りで終始した。I先生の温和さや誠実さをA病院の理事も感じられたようだ。このA病院は高齢者医療サービスを主軸としているので、I先生は意中の人材だったのだろう。理事からは「是非、入職していただきたい」というお言葉があった。

2時間後、私とI先生は医療施設の玄関を出た。A病院からはこの上ないお言葉をいただいたので、後は先生次第である。私はI先生にA病院の印象を伺った。I先生は「理事の期待にどれだけ答えられるかは分かりませんが、お手伝いができればと考えています」とおっしゃった。私は聞き間違えをしたのかと思い、再度確認をしてみたが、答えは同じだった。
『あれっ、I先生、お知り合いから紹介されたB病院はどうされるのですか』
「あの話は、やはり家業を手伝わないといけない事を考えると、5日勤務+当直という勤務条件が現実的に難しいと判断しました。それに知人の紹介である以上無理も言えないですから」
『えっ、I先生それでは』
「これだけ私の希望にマッチした医療機関は他にないと思います。このタイミングを逃すと、二度とないような気がしましたし、理事も即決してくださったので、私も即決させていただきます」
『I先生、ありがとうございます。ご勤務よろしくお願いいたします』

感謝の気持ちと、勤務が始まるI先生のサポートをしっかり努めようという誓いを込めて、I先生と握手をした。最終的な条件面は、年俸1,200万、当直なし、週4日勤務で、そのほかの希望条件もクリアし、全て満たした形で合意することができた。

「人には口が一つなのに、耳は二つあるのは何故か。それは自分が話す倍は相手の話を聞かなければならないからだ」と、ある人から言われたことがある。これからもコンサルタントとして多くの先生方や医療機関の声に耳を傾け、全力でサポートをしていきたい。

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