ドクター転職ショートストーリー

正直に話してみよう(下)

2011年7月1日 コンサルタントT

K先生は、「A病院への入職の返事を少し保留にしてもらいたい」と唐突に言われた。
他社にも登録していると聞いていたので、他社からの紹介病院にも面接に行きたいということだと容易に想像できた。当然だが、転職はK先生の一生に関係して来ることである。他にもいい案件があってそちらを選ぶとK先生が決断されたなら、それは私の力不足であり、いい案件を提案出来ずに申し訳ないと思った。

詳しく聞いてみると、他社から紹介されたB病院にも興味を持ったとのことだった。
因みにB病院のことは自分もよく知っている。人事担当者の方も非常に懇意にしてくれている病院だ。K先生の希望には合致する条件の病院である。しかし、勤務日数の事で中々融通を利かせてくれない病院でもある。そんな経緯もあって自分の中では最優先とはいかなかった為、積極的に提案せずにいたのである。

K先生の口から、さらに意外な言葉が飛び出した。
「B病院への紹介ですが、リンクスタッフからという形でお願いできませんか?面接の立会いや交渉をお願いしたいのです・・・」
他社のコンサルタントとは実際に会ったことがなく、病院との面接を決めればその時に初めて会うことになる、顔の見えない相手に転職のことを任せるのは不安だとのことだった。私が引き受けなければB病院の面接はしないとも仰られた。

この時ばかりはとても悩んでしまった。
頼られる事は嬉しいし誇らしくもある。しかし先に紹介したA病院には何と言えばいいのか?そもそもB病院も急に紹介先が変わって対応してくれるのか?
悩んだ末、K先生の意思を優先するという結論に達した。ただし、各病院へ正直に話しをして了承が得られなければ断るとK先生にはお伝えした。

先に話しをしたA病院からは了承を得た。他の病院との比較をしたいとのK先生の考えに理解を示して頂けた。B病院にも了承を得られた。K先生の考えを尊重して頂けるとのことだ。この話を切り出した時にはさすがに担当者の方も驚いた様子だった。

B病院との面接では最初に院長と面談し、その後指導医にあたる先生との顔合わせを行った。先生方との面接後に院内見学をした。案内してくれた事務長がユニークな方で、面白可笑しく病院内の裏話をしてくれた。失礼ながら、院長や理事長がいない時に聞ける裏話は、病院の本音が垣間見えて非常に面白い。同時に病院の今後の展望についても熱く話して頂けた。これで2つの病院での面接は終了した。

K先生の出した結論は、B病院を選択するとのことだ。
ネックとなっていた勤務日数に関しては、当直に少し多めに入ることで了承を得られた。年俸は1400万円、週4日勤務、内視鏡に関しては指導医の先生に付いていただけること、また研究日に非常勤勤務に行くことについても了承が得られ、入職が決定した。

A病院には丁重にお詫び申し上げた。
もしもの話をしてもしょうがないが、最初から両方で面接を組んでいたらどうなっていただろうか?自分で情報をちゃんと精査出来ていたのか?色々と考えさせられることの多い事案であった。A病院に対して申し訳ない感情を抱いていたが、先方は「ご縁が無かったのであればしょうがないですよ。色々とありがとうございました」と言ってくださった。

次はA病院へいいDrを紹介するという気持ちをモチベーションにし、今後も頑張っていきたいと思う。

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