ある精神科医師の転職(下)
2012年10月01日 コンサルタントT
理事長先生は、「我々のクリニックは確かに精神科外来診療をメインにしているが、これからは精神科のクリニックも在宅往診に注力していかなければならいない。既に訪問看護は行っているが、ACT(包括型地域生活支援プログラム)のノウハウを得るために京都のT先生のところへ、看護師や介護福祉士などのスタッフを研修に行かせている。これは本当に大変な仕事だよ。重症の精神科の患者を在宅で診なければいけないし、24時間対応も必要になってくる。A先生のお考えには共感できることも多々あるが、基本的に精神科診療に対する考え方に相違があるね。」とお話をされました。
早速、私はA先生にお詫びと、結果報告をいたしました。A先生は特にご不満も無く、他の求人の紹介依頼を頂きました。次にご案内したのは兵庫県下の病院併設のクリニックでした。こちらも直ぐに面接となりました。
面接当日、A先生は前回と同じお話を先方院長先生にされました。基本的に外来診療だけでも構わないということで、即採用に結果に至りました。しかしながら、A先生は、いずれ「病棟も診てくれ」という依頼があるに違いないから慎重に検討したいとのご意向でした。このお話を先方の事務長様にしたところ、翌日返事があり、院長先生のお考えとしては、「お互いに1回や2回の面接では解りあえることは難しいから、1カ月程お試し勤務をしてみたらどうか。」ということでした。A先生も今月いっぱいで現勤務先を退職することが決定しているので、来月からであればお試し勤務は可能とのお返事を頂きました。
勤務開始から2週間ほど経ってから、事務長様より丁重なお葉書を頂きました。内容は、「A先生は同僚の先生方やコメディカルスタッフとのコミュニケーションに留意されながらお試し勤務に精進されておられます。無事、両者合意に達することを担当者として祈念しております。」というものでした。
約2週間後、不安な気持ちでA先生に電話をいれました。A先生から「やっぱり検討期間を設けてもらって良かった。病院の内状や他の先生方と話をしてみてお互いに理解し合えた。病棟管理もお互いに助け合おうという病院の方針で、学会出席などで病棟管理をする医師が不在時は手伝っている。逆に自分が外来を診れない時は助けて頂いています。この病院にお世話になるよ。」と嬉しいお返事を頂きました。
病院側も採用OKで、条件面は週4日勤務、当直は基本的に無し、年俸1,500万円、お仕事の内容も併設クリニックの外来がメインで、一部、病院の外来も担当して頂くということで、A先生のご希望にそえる結果になりました。
今回は、医療における専門性も重要であるが、チーム医療というものがいかに大事かを痛感致しました。
完