転科と医局(下)
2016年02月01日 コンサルタントI
N先生との面談にてヒアリングしたことを精査し、改めて整形外科専門医研修施設をあたりました。
先生がマリンスポーツを趣味としていることで、『海に近い場所に転居することも考えられるかな、でも暇はないだろうけど』と面談時に話されていたこともあり、地域の選択肢は増えました。
医療機関としても若手医師の受入れは基本的に前向きではあるが、研修施設とはいえ、現状は医師不足のため十分な指導体制が整っていないなどの施設もありました。
それでもN先生を受入れ可能な医療機関は多くあり、都度ご紹介を続けていました。
救急科専門医試験が終わった月末、先生に来月に向けての施設見学・面接のご予定を伺いました。
N先生からはご面談時にご紹介した、ご自宅から近いS病院と整形外科の症例数の多いH病院の面接設定のご依頼があり、2週間後の当直明けの日にS病院、さらに1週間後にH病院の面接を設定致しました。
面接日当日、先生は当直明けでしたが、お疲れのご様子は見られず、これからの面接に少しだけ緊張しているようでした。
S病院に到着すると病院には一台の救急車が到着したところでした。
面接は院長先生が対応して頂くことになっており、応接に案内されると、院長秘書の方が『緊急オペが入り院長が対応しておりますので、申し訳御座いませんが、一時間ほどお待ちいただくことは可能でしょうか』
N先生は『大丈夫です。』
先ほどの救急車で運ばれた患者さんが、緊急を要することであったらしく、N先生は事情も十分にご理解しておりました。
一時間後。秘書の方が現れ、まだまだ時間を要することを伝えに来られました。
さすがにこれ以上N先生に待ってもらうわけにも行かず、たとえお待ちいただいたとしても、院長先生、N先生、双方にとって、良い状態での面接とは言い難いと思いました。
『申し訳御座いません、お時間を改めましょう。』
先生のご理解を頂き、病院側にもその旨をお伝えし、S病院をあとにしました。
N先生に重ね重ねお詫びし、改めて次週のH病院の面接をお願い致しました。
先生は『患者さんが第一優先ですから致し方ありません。実は来週のほうが期待していますので、こちらこそ宜しくお願い致します。』
面接日の再設定は次週のH病院の面接終了後ということになりました。
H病院の面接日。
出席者は院長、診療部長、事務長の3名
院長先生の診療科目は整形外科であり、N先生にとっては直接ご指導を頂ける機会もあるだろう。
院長先生のお考えはワークライフバランスを重視しており、忙しい病院であるからこそ、メリハリのある勤務を望まれていました。
N先生が整形外科専門医を取得するには十分の体制が整っており、面接も滞りなく、双方良い状態で行なわれました。
面接が終わり、先生にH病院の印象を伺ったところ、『いいと思いますよ。雇用条件を確認してから決めます。』
数日後、H病院からN先生への招聘条件が届き、先生に意向を伺ったところ、
『十分情報も得ましたし、院長先生のお話も伺えましたので、H病院で決めます。』
救急車受入れ台数も多く、整形外科症例数も多い、さらには院長先生が整形外科ということもあり、ご決断となりました。
残された課題は、現勤務先である大学病院の退職について、N先生は退職について問題視はしておりませんでしたが、私としては医局を抜けるということはそう簡単なことではないと思いました。
N先生は来週上級医に話しますと仰いましたが、すんなりといくかどうかは、先生の強い気持ちが必要でした。
案の定、上級医、さらには教授から強い引き止めが先生を悩ますこととなりました。
先生としても当然、円満退職を望まれおり、私への相談がありました。
私としては先生の退職の意思プラス、リンクスタッフを介しての転職という状況を出すことで先生の逃げ道を作り出すことにしました。
多少の時間はかかりましたが、リンクスタッフの名前を出すことと先生の意思の強さにより、大学側も退職を認めたとのことでした。
後日、H病院の雇用契約書の署名捺印のため、お会いした時に、医局を抜けることは思っていた以上に気を使うことと仰っていました。
完