本心を把握する事の難しさ(下)
2016年06月01日 コンサルタントK
その1週間後、もう1つの老健施設との面接に臨みました。施設に行く途中から、電車の本数が少ない、駅から施設まで遠いなど、色々とご意見が有りました。
こちらでの面接には理事長、常務理事、事務部長の3名が出席されました。面接の席上、W先生は理事長が自分より年下と分かるや、これまでの口調で話され、前回と同じくカルテのことで質問をしておりました。
面接、見学を終え、帰り際、W先生がいない時に事務部長に印象をお聞きしたところ、「W先生がウチにいらしても先生のご希望に沿えず、かえって迷惑をお掛けするかもしれません。このあと理事長と相談して明日正式にご回答します。」との返事がありました。
カルテをはじめとした様々な点について持論があり、その点が引っ掛かったのではないかと思いました。
帰りの電車の中でW先生にも印象をお尋ねしましたが、「この前の病院はどういう勤務条件だったかな?」と今訪問した施設ではなく、先日訪問した病院のことについて質問してきました。
その時「あまり今の施設は気に入られなかったのだな。」と感じました。
翌日、施設の事務部長から予想通り正式にお断りの連絡がありました。
W先生もやはりあまり良い印象はなかったようで、療養病院との契約の話を進めてほしいとの御指示をいただきました。
早速、療養病院の事務長にW先生の意向をお伝えし、勤務条件の正式提示を依頼しました。
後日病院から提示された雇用条件通知書の確認、雇用契約書の確認をW先生にお願いし、私から修正点はないか何度も確認し、その内容についてすべてご承認いただいた上で再度病院に訪問して契約書に署名・捺印する段取りを組みました。
訪問当日、まずは理事長にご挨拶を済ませ、その後場所を変えて、いよいよ契約書に署名・捺印する運びとなりました。
事務長から改めて勤務条件の説明をしていただき、あとはW先生の署名・捺印だけというその時・・・。
「週4日の勤務日数を減らしてほしい。」と、突然W先生が言い出しました。私を含め、同席していた関係者一同、W先生の言っていることがすぐに理解できず沈黙の時間ができました。
「W先生、契約内容については昨日も最終確認して問題ないとおっしゃっていましたよね?」と私から話しかけました。
「体力的に心配なので、日数が少ない方がいい。」との返事でしたが、「合意していたものと違う条件を急に言われると、この話自体が無くなることになりますよ。」とお話ししました。
目の前にいる病院の事務長も困惑した表情を見せていましたが、「それでは一回話をリセットして、W先生のご希望に添えるか病院側で検討します。」と言って振り出しとなりました。
W先生には先に帰っていただき、事務長と今後の対応について話し合いを持ちました。まず今回の失態について謝罪をし、今後については提案として当初提示の条件で3ヶ月勤務してもらい、大丈夫であればそのままの条件で、体力的にきついようであれば条件を見直して継続勤務することは可能か検討のお願いをし、持ち帰っていただきました。
翌日W先生に突然あのような話をしたのか再度お聞きしたところ、「もし勤務日数を減らしてもらえるのであればいいなと思って言っただけで、別に減らしてくれとは言っていない。提示されていた条件で勤務することは問題ない。」と弁明していましたが、今回の件は破談になる覚悟を持ちました。
後日事務長から連絡があり、「理事長、院長と相談した結果、病院としてはW先生に是非来ていただきたいので、先日の打ち合わせ通り3か月間週4日勤務をしていただいて、大丈夫であればそのままの条件で勤務を、体力的に無理なようであれば勤務日数を減らした形で引き続き勤務してほしい。」とのことでした。
病院には非常に感謝の念を持ち、W先生に報告しました。
「別に最初の条件で契約しても問題ないと言っただろ。」と相変わらずの調子でおっしゃっていましたが、病院と調整した条件で勤務してもらうことに納得してもらいました。
その後改めてW先生と病院を訪問し、無事契約を締結することができました。
W先生は、現在も週4日で勤務している最中ですが、先日近況をお伺いしたところ「別に問題ないよ。」と何もなかったことのように話されておりました・・・。
日頃数多くのドクターとお話しさせていただいておりますが、今回の件を通じて相手の考えを的確に吸い上げることの難しさを改めて再認識させられました。また、本当の意味でドクターの内心まで踏み込めていなかったという反省もあります。
今回の件を教訓として今後ドクターとお話しする際には本心を汲み取れるよう、今よりも、もう一歩踏み込んだ対応を心掛け、より良いご転職に繋げられるよう尽力していきます。
完