Win-Winの関係(下)
2016年10月01日 コンサルタントO
周りに内科医がいないのであれば、自分がその内科医になればいい・・・しかし、自分もようやく精神科医として経験もスキルも充実してきた時期である。その充実度合に見合った年収も得る事が出来るようにもなった。
本来、J先生は人一倍慎重に物事を考えられるDr.です。
だからこそ、内科医への相談なしでの診療にストレスを感じられる訳なのですが、その慎重なDr.が転科をしようかという事ですから、その悩み具合は大変なものでした。
今まで修得した内科スキルは研修医時のもので、それも今となっては実践に使用するに至らない。
とは言っても、精神科医としての経験・スキル・年収を捨てて、今さら研修医をして転科するには決心がつかない。
でも、内科医のいない病院に戻っても、今までと同じストレスを募らせるだけ。
それでは、内科医がいる病院へ転職するというのは?とお聞きすると、今は内科医がいても、辞めてしまえば・・・と考えると根本的な解決にならないとのご返事でした。
慎重なJ先生らしいご意見です。
この日から、私とJ先生の情報交換をする毎日が始まりました。
年収を大幅に下げてでも、転科するのか?
今のスキル・経験を生かしたまま精神科医として進むのか?
毎日のように、J先生の考えも揺らぐ状態で、この転職計画は長期化する気配がありありと漂っておりました。
そんな、ある日。療養型の病院から精神科Dr.の募集が入って参りました。
内容は療養病床で入院されている患者さんの大部分が認知症等であり、その為の募集でした。一見は通常の精神科医の募集でが、もしかすると・・・と思い、その病院に直接に訪問し、思い付いたままに交渉をしてみました。
その交渉した内容は以下の通りです。
・週5日勤務。
・そのうち、週4日は精神科医として勤務。週1日は指導医を付けて頂き、内科医(研修医と同等)として勤務。
・当直の際に、他の内科Dr.に付いて頂く。
・年収は今までの医師免許証を取得されてからの、経験年数により算出して頂く。
まさしく究極の折衷案でした。
病院側も診療報酬が多く取れ、しかも、長期での勤務が期待出来るという事が、魅力で了承頂く事が出来ました。
人一倍慎重なJ先生も容態が急変する恐れの多い急性期であれば、躊躇されるところ、症状が落ち着いた状態での療養病床からのスタートであれば、本来の目的であった身体合併症の処置もじっくり覚えていけるという事で、お互いの思いは合致し、今まで全く停滞してしまっていた話が、一瞬にして前に進みました。
今では内科兼精神科医として、日々、充実したご勤務をされています。
当初は「AかBか」とばかり悩んでおりましたが、「AをしながらBも」という見方を変える事でその選択肢を増やす事が出来ました。
今回の事で、「医療機関と医師」、この両方が共に有益な良好な関係であるという「Win-Winの関係」を造る事が、コンサルタントという職種の本来の意味ということを再確認する事ができました。
お互いにとって、何が有益なものになるのか?それを、察知出来なくてはなりません。
コンサルタント業もやはり、日々勉強でございます。
完