理想的勤務へ最後のチャンス(下)
2017年03月01日 コンサルタントI
整形外科S先生が求める病院(重度外傷治療・マイクロサージェリー実施、常勤医師複数在籍)は先生の希望地域において現時点では募集がなく、遠方の病院であればマッチする可能性があり、先生に転居や平日単身赴任し、週末ご自宅というような条件でのご検討は可能かを、僅かな望みとは思いましたが、お伺い致しました。
先生は過去にそのような勤務を数多くされておりましたが、さすがに今は考えられないという、当然の回答となりました。
もう一度、病院に交渉するしかない。
先生の理想的な病院は現在なくとも、S先生が入職された場合に、それに近づくように病院の体制を変えていく考えを持つ病院をご紹介していこうと思いました。
求人のある、もしくは検討の余地のある病院を改めてリストアップして、病院に出向き、S先生の希望と思いを再度お伝えし、先生を受け入れた場合の病院側のメリットをアピールする動きを行いました。
各病院の事務長と面談し、『S先生の思いは理解できますが、先生のご希望に副うことはなかなか難しい』という回答が多くありました。
理由としては、重度外傷患者が多くはない地域や、病院として地域の役割分担により、対象患者層の違い。
設備導入の資金的な問題、医師だけではない人員体制の問題。などなど・・・
数箇所の医療機関の事務長と面談させて頂いた後、ある病院の法人本部の担当者から連絡がありました。
その病院は事務長と面談させて頂いた時点では、人員的に欠員している状況ではなく、体制強化に向けた増員計画があるが、マイクロサージェリー用医療用顕微鏡の設備導入で難色を示していました。
100床の小規模病院で数百万~1千万の設備導入は二つ返事という訳にはいきませんでしたが、整形外科の手術件数を増やす方針とのことで、可能性が一番ありそうでした。
数ヶ月前にグループ病院の傘下になり、連絡はグループ本部の医師採用担当からのものでした。
『事務長から話を聞き、紹介してもらいたいので、S先生について詳細を知りたい』
先生の希望する手術、人員体制など、これまで幾度もアピールした内容をお伝え致しました。
『設備導入は問題ないと思いますよ。病院単体ではなく、グループとして決済を取ります。』
その病院は元々整形外科にて開設し、現在は整形外科のほか、内科・外科・泌尿器科・形成外科・皮膚科などを標榜しており、先生のご自宅から近く、院長先生が整形外科で常勤医も他に1名、それぞれの専門手術を対応する非常勤医師が2名という体制で、過去に重度外傷患者の受入れも行っておりました。
他に候補病院もなかったので、最後の望みと思い、S先生に連絡しご紹介致しました。
毎日病院の前を通り過ぎているが、思いもつかなかったと仰いました。
『是非、面接をさせて頂きたい』
先生からの依頼もあり、面接日時の調整を行い、面接実施となりました。
面接の当日、現状の病院としての地域における位置付け、救急受入れ患者層、手術症例・件数、入院患者数、麻酔科医の体制などの他、グループ本部側からは、グループとしての病院の役割、麻酔科医増員計画、コ・メディカル増員計画などグループ傘下となったことで体制強化を図る時期とご説明頂きました。
救急隊への病院説明会などの宣伝活動を行えば、重度外傷患者の受入れも増加でき、S先生も宣伝活動・勉強会開催は積極的に実施したいと協力的でありました。
病院として、今後は整形外科手術で生き残りをかけるという方針であり、現時点ではS先生が考える理想的な病院体制ではありませんが、理想に近づく可能性を秘めた病院であり、S先生も同様に感じておりました。
その場である程度の年棒などの条件面もすり合わせを行い、双方とも基本合意に至りました。
問題はS先生が希望する3ヶ月先に現職場を退職できるか否かであり、現職場との雇用契約書の残り期間は8ヶ月ありました。
しかし病院側は8ヶ月先でもお待ちしていますと快諾して頂き、面接は終了となりました。
その後、病院側から正式な条件面の提示があり、先生も承諾されました。
一時は8ヶ月先の転職にて雇用契約締結になりましたが、現勤務先の後任医師の採用が決定したことにより、3ヶ月前倒しの入職となりました。
現時点ではS先生の理想的な病院とは断言できませんが、S先生が最後のチャンスに賭けるに値する病院をご紹介することができました。
今回具体的なご紹介は1病院のみでしたが、S先生のお考えを十分理解した上での紹介であったため、即決定となりました。
言葉数の少ないS先生が最後に『ありがとう』と仰って頂いたことで、満足のいくご紹介ができたのではないかと思います。
これからも先生方のお考えを十分理解して、医療機関と交渉し、より良い転職となるよう尽力して参ります。
完