#02 ちょっと気になる?産業医のキャリア事情
医師と言えば病院に勤務するものと思われがちですが、実際はそうとは限りません。たとえば、産業医として一般企業に勤める方法もあります。しかし、実際に産業医がどのような仕事をしているのかよくわからないという人もいるでしょう。そこで、産業医に興味があるという人のために、その職務内容や役割について説明をしていきます。
産業医の仕事とは
産業医とは、簡単にいうと労働者が健康を維持できるように助言や指導を行う医師のことです。ただ、その具体的な業務内容は企業の規模や業態によっても異なります。たとえば、工場などではさまざまな事故が危惧されることから、作業現場を巡回しながら安全対策を講じるのが主な仕事になります。巡回の結果、もし作業方法や衛生状態に問題があると判断した場合は、責任者に問題点の改善を求めていくわけです。それに対して、デスクワークが中心の職場の場合は、運動不足による生活習慣病などの予防をいかに行っていくかが産業医の重要な役割となります。すべての産業医に共通する仕事としては、定期的な健康診断や労働者への健康指導などが挙げられます。さらに、残業過多などから心身に大きな負担を感じている従業員に対して面接を行い、必要に応じて休職を命じたり、復職の可否を判断したりするのも重要な役割です。特に、メンタル面の不調を訴える労働者が増えてきているため、その対応が産業医の中心的業務の一つになってきています。ちなみに、産業医を選任する義務があるのは従業員を50名以上抱える企業だけで、それも1000人未満であれば嘱託医でよいとされています。嘱託医とは、開業医や勤務医として病院で働きながら、契約の日だけ企業に赴く医師のことです。そのため、専属の産業医になるためには必然的に従業員1000人以上の大企業の中から求人を探さなくてはならないことになります。
高まる産業医のニーズ
産業医は慢性的な人手不足に陥っています。労働安全衛生規則に定められている産業医の必要人数に対して、認定産業医の資格を持っている医師が圧倒的に少ないのです。しかも、従業員の健康維持・増進を生産性向上につなげようという「健康経営」という考え方が企業間で広がりを見せているため、産業医のニーズはこれまで以上に高まっています。それならば、産業医希望者の就職先は引く手あまただと思うかもしれませんが、実際にはその大多数が就職先に恵まれていないという現象が起きています。なぜかというと、多くの者は専属の産業医を希望しているのですが、圧倒的に需要が高いのは嘱託医の方だからです。嘱託医の場合は職につけたとしても病院との掛け持ちになるので敬遠する人が多いのです。しかし、これは考え方によってはチャンスだとも言えます。掛け持ちは大変だと思うかもしれませんが、産業医は病院などと違って当直などはなく残業も少ないので、うまく行えばトータル的に負担が軽くなる可能性があります。それに、将来的に専属の産業医を目指すにしても、嘱託医としての経験があった方が有利です。このように考えると、専属の産業医になるためのキャリアステップの一環として嘱託医を経験してみるのも手段の一つでしょう。ちなみに、専属産業医の求人募集はほとんど表に出ることはありません。そこで、仕事を見つけるためには産業医専門の転職エージェントなどに登録しておくことをおすすめします。
「働き方改革」を支える産業医
企業は、過労死やメンタルヘルス疾患の増加などによって働き方の改革を迫られています。そして、その中心的な役割を期待されているのが産業医です。たとえば、労働安全衛生法令の改正によって産業医は時間外労働が月に100時間を超える労働者の情報を入手し、事業者の同意の上で職場巡視を2カ月に1回以上行うことができるようになりました。このことにより、労働者の安全や健康に対して積極的に関与できるようになったのです。産業医にとっては、より大きなやりがいを得られると同時に重い責任を背負うことにもなります。そのことを自覚し、よりよい職場環境の構築に貢献できる産業医を目指していきましょう。