#06 医師が留学で学べること
海外の大学病院やクリニックへ留学する医師は昔から一定数います。日本も世界的に秀でた医療技術を持つにも関わらず、海外で医療を学ぶ目的としては何が挙げられるのか、今回はその目的や留学のタイミングについてご紹介します。
留学の目的とは?
医師の留学は、基礎研究目的の「研究留学」と、実際に患者の手術やケアにあたる「臨床留学」の2種類に大きく分けられます。前者の場合、例えば、日本ではほとんど研究されていないテーマや治療方法などを研究するために留学するケースが多いです。研究留学先として選ばれる割合が高いアメリカでは献体数が多く、実際に人間の臓器や骨などを用いた研究で、より具体的かつ統計的な研究成果を出すことが可能となります。この研究結果が学会や学術誌にて発表されることで、医師としての学術的な専門性が評価されることにつながるのです。一方、臨床留学の場合は、医師としての技術力を高める目的で留学します。高度な手術方法や思考プロセス、難しい症例など、日本では通常経験することの少ない問題を扱い多種の臨床経験を積むことで、医師としての技術力や応用力を高めるものです。そのため、一口に「医師の留学」と言っても、留学内容や目的、求められるレベルは大きく異なります。自身のキャリアビジョンを明確にし、どのような形で留学することが自分にとって適切なのか熟慮する必要があるでしょう。
留学するタイミング
研究留学の場合、一般的に大学院で博士号取得後5年以内に博士研究員(ポスドク)として留学するケースが多いです。医学研究者を目指す際は学位取得後も博士研究員として研究を継続し、限られた人が自分の研究室を主宰、もしくは医療系企業の研究者として勤めます。そのため、博士号取得後に早い段階で留学することは、ストレートなキャリアパスであり、若いうちから多くの研究経験を積むことができるので良好なタイミングとなります。一方、臨床留学の場合は、初期研修終了後2~4年で留学するケースが多いです。ただ、留学先で手術やケアをすることになるため、専門分野によっては臨床医として一定の経験を経てから留学する場合もあります。特に、外科系は一通り手技の習得ができていないと留学先で対応できる臨床経験が狭まる可能性もあるので、日本での豊富な臨床経験が留学を左右するでしょう。また、留学するタイミングは医局や先輩医師から紹介されたときや、留学制度を設けている病院が推奨した時期など、他者からの提案で決まることもあります。留学を検討する際は、あらゆる情報やアドバイスを収集しましょう。
学べることは医学以外にも
日本から海外へ医学留学する際、渡航先の医療について学ぶのはもちろんですが、他にも語学や文化、日本とは異なるコミュニケーションについて学ぶことができます。英語圏の場合、医療従事者や患者との会話はもちろん、研究においても学会や論文が当然英語になります。尚且つ、専門性の高いワードや新たに注目されているトピックに関するワードに触れる機会も多いので、語学的能力の向上を期待できるでしょう。また、現地での生活を通し、生活習慣やヘルスケアに対する意識の差を知ることもでき、自身の知見が広がります。結果的に、そこで得た知識が研究のヒントにつながる可能性もありますので、海外での一つ一つの経験が自分の糧となるでしょう。そして何より、留学先で出会う医療従事者や知人など、新たな人脈を築けることが留学の醍醐味でもあります。特に、医師の場合は難病に対するアプローチや最先端の研究、最新の医療機器など、医療業界を取り巻く多くの事柄にアンテナを張っておく必要があるため、留学後も有益な情報交換ができるグローバルな人脈が専門性を高める鍵となります。