運営・経営方針
1.運営・経営方針
練馬総合病院の理念は「職員が働きたい、働いて良かった、患者さんがかかりたい、かかって良かった、地域に在ってほしい、あるので安心といえる医療を行う」ことである。
「職員、患者さん、地域の皆さんが満足することが大切です。何よりも職員が働いて良かったと思わなければ、患者さんを満足させることはできませんから、職員には『自分を大事にしなさい』と言っています。私は月に一度、職員にイントラネットで自分の考えやお勧めの書籍を配信しているのですが、最近は斉須政雄さんが書いた『調理場という戦場』を紹介しました。この本に書いてあった『自分のために、楽しんで仕事をしなさい』というメッセージはまさに私の言いたかったことです。」
練馬総合病院では2012年に公益財団法人として認可されたことを契機に、「医療の質向上研究所」を併設した。2013年には「医療の質向上研究所」が文部科学大臣から科学研究費補助金取扱規程に適用する研究機関に指定された。
「公益とは不特定多数の利益になることです。私は院長就任以来、公益活動を精力的に実施してきました。住民や医療従事者対象の講演会や研究会を開催したり、一般の産業界とも連携して、品質管理や経営管理を研究し、実務に活かしてきたのです。そして、この成果を出版や論文の掲載を通じて、社会に還元しています。」
職員教育も充実している。年度初めに病院の理念に沿って年間統一主題を設定し、教育委員会で年度計画を立てたうえで、役職者研修、年次別研修、新入職員研修を行っている。新入職員研修は全ての職種を対象に2日間をかけて行い、その後、部署ごとの研修となる。
「自分で考え、実践することのできる職員に育てていきたいと思っています。当院の職員教育の手法は全日本病院協会でも広めています。品質管理の考え方は論理的で筋道が立てられたものであり、合理的で効率的です。他院では改善活動が部署ごとになっているところが多いようですが、当院では多職種連携を行っています。病院は交代勤務であり、かつ忙しい職場ですから、多職種を集めて会議を行うのは大変なのですが、この取り組みを始めて来年で20年になります。どのチームにも医師が入っていますし、研修医にも関わらせています。地域連携会議や症例検討では研修医も発表しています。こういった経験は後になって役立つはずです。」
ほぼ全てのデータを電子カルテで閲覧できるようになっている。また、データウェアハウス(DWH)を構築し、柔軟なデータ活用を進めており、これにより、医師が論文を書くためのシステムが整備されたので、学会発表の件数も増加している。学会発表、論文(英文・和文)作成の指導もする。
「新しい知見を得やすくなりましたし、情報がシームレスに繋がっていますから、特に若い医師には好評です。当院には質保証障室という専門の部署があり、4人の職員が常駐しています。また、他院ではカルテ室と呼ばれる部署を医療情報管理室と命名して活動していますし、企画情報推進室にはSEが3人在籍し、独自の情報システムの構築のために、それに見合った組織を作っています。」
2.地域連携室
練馬総合病院は「練馬医療情報連携ネットワーク」を中心になって構築し、地域連携をリードしてきた。このネットワークにより、開業医が練馬総合病院に紹介した後の患者さんの検査結果やリポートを見ることができたり、オンライン上で24時間いつでも診察・検査予約ができる。なお、この仕組みは厚生労働省の補助金事業となっている。
「東日本大震災では患者さんの処方データ箋が紛失して問題になったことがありました。当院では独立したサーバーに連携医療機関の患者データを保管しており、連携先の診療所や薬局は平常時には自分の機関のデータを常時参照でき、災害時や非常時に院長の私の許可があれば、そのデータを相互に利用できることになっています。これも公益財団法人としての取り組みの一つです。」
3.今後の展開
いい医療といい経営を実践していきたいです。厳しい社会情勢の中で、どうしたら病院が存続できるのか、どうしたら存続価値を認められるのかを皆で考えています。当院で働く職員が生き生きと働ける職場でありたいです。