病院の特色
1.二次救急医療
富士市立中央病院は地域の二次救急や高度医療を担っている。
「当院の年間の入院患者さんは12,000人ぐらいで、そのうち救急の患者さんは3分の1を占めます。この地域は一次救急を医師会の先生方や富士市救急医療センターが受けますので、当院では二次救急を完全に受けることが使命でもあります。高度医療に関しては周産期医療など、ほかの病院ではできない医療を行っていくということですね。」
平成29年に地域医療支援病院に承認され、医療連携もますます充実してきた。
「地域医療支援病院に求められるのは何かに特化して多方面から患者さんに集まっていただくことではなく、トータルなバランスを整え、この地域の二次医療を完全に守って行く診療体制を作ることです。当院はこの10年で診療科が充実し、足りない科がほとんどなくなりました。この5、6年で医師も20人増えたんです。ある時期は消化器内科、精神科、神経内科の医師がいなかったのですが、今は充足しています。そのため、初期臨床研修医が内科を回る場合でも偏りがない教育が可能になっています。基本的にはそれぞれの大学の教室から医師が派遣されてくるのですが、当院の中では医局の垣根がなく、医局そのものも総合医局になっています。大学の年齢構成に比べると若い世代が多く、良い研修ができます。当院は専門医の修練施設としての機能を十分に備えていますから、新しい専門医制度にも対応できます。卒後3年から10年ぐらいの世代が多く、同級生たちも入ってきますから、横の繋がりが強いです。病院開設時から若い医師が診療をしていた歴史がありますので、若い人にとっては働きやすい病院だと言えるでしょう。」
2.診療科の特徴
柏木院長に診療科の特徴について、伺ってみた。
「当院の特徴として、循環器科があり、循環器内科と心臓血管外科にて構成されていることが挙げられます。内科は臓器別の各専門内科により構成されています。血液内科は特に専門性の高い領域ですが、当院には血液内科の専門医がいます。これも大きな特徴でしょう。三次医療の病院やがんセンターには血液内科がありますが、一般的な自治体病院では血液内科が減っています。周辺の自治体病院では診療科の縮小や閉鎖が生じていますので、当院の各診療科に負担がかかっていますね。しかし、ほかの自治体病院が診療科を縮小する現象を受け止めつつ、当院は進歩し成長しなければなりません。」
静岡県は医師の偏在が大きな課題になっている。
「静岡県は中部・西部は病院も医師数も多いのですが、東部は医療者数が少ないんです。その限られた人数で医療を確保しなくてはいけません。幸い、当院は医師のみならず、職員も増えてきていますので、この地域の医療を支えることができています。しかし、当院は33年前に作られた病院なので、現在の医療体制に十分に対応できているわけではなく、スペース的な問題もありますが、救急部や救命救急センターもありません。しかし、その中で各科で救急対応をしています。」
富士市立中央病院はオールラウンドに対応できる診療体制を作っている。
「これはできないということは避けたいですね。ある程度、多くの診療科を揃えることが学生や研修医の教育的な面からも重要なのです。高度機能病院や特定機能病院のように専門性が非常に高い医療ではなく、全体的なバランスを保って高いレベルを目指しています。この地域も色々な病気をお持ちになっている高齢の患者さんが多いですので、目的とする病気だけを治すのではなく、治す過程の中で患者さん全体を診られるかどうかが大切です。当院の強みは連携の中でトータルに患者さんを診ていけることです。昔からの問題点として、医師が毎年3分の1ほど変わることが指摘されていますが、変わることで大学から新しい知識を持ってきますし、一つのところに収まらず、色々なところを見ていくことで常に新しいものが生まれると思います。一方で、ほかの職種は地元の人が多いです。子どもの頃から当院が絶対的な存在であり、本人や家族が治療を受けた職員も少なくありません。そのような中で育ち、それなりの思い入れを持って働いている職員と色々なところから来ている医師との間で、良い意味でチーム医療ができていることを実感しています。」