『女医の決断!』(上)
2008年06月15日 コンサルタントY
朝7時45分。必ずこの時間になると電話が鳴る。
30代前半、独身、女性、ファッション雑誌からそのまま抜け出してきたような先生で、毎日決まった時間に電話をかけてくる律儀な印象の先生だ。F先生は、出身でもある関東地方の某私立大学付属病院に勤務されている皮膚科のドクターである。
F先生の所属する医局でも多分にもれず医局員不足で、F先生は日々激務を極めていた。毎日、朝の数分しか話ができないのもうなずける。医師免許取得後、皮膚科一筋でやってこられたF先生は、今では患者を診るだけではなく、研修医や若手Drの指導的立場の先生だった。
初めてお会いしたのはすっかり秋も深まった10月の終わりだった。
ある日の夜9時ごろ、帰り支度を始めだした事務所に一本の電話がかかってきた。「転職希望なんですが・・・。」力の抜けかかっていた体にまた力が入ってきそうな元気のいい声の先生だった。
『私にお任せ下さい。まずはお会いしましょう。』早速、翌日お会いする事になった。
先生の転職理由は激務に耐えられないからだと言うものではなかった。
「今の自分も含め、私の知っているDrはみんな業務をこなすことに精一杯で、どうしても患者様の気持ちになって診てあげられていない気がします。なんとなく威圧的に話しかけてしまうというか・・・。」と、胸の内を語られた。
更に、「レストランに入った時やデパートで買い物している時なんか、そこで働いている人たちに接するたびに、本当に気持ちがよくなります。お客様への対応というのかサービス精神というのか・・・。
私、そういう気持ちになる度に、いつも彼らに尊敬の気持ちがわくんです。私も患者様に対する接し方を変えなきゃいけない、患者様のことを第一に考えて向き合っていきたいと考えるんですが、なかなかできなくて・・・。
出来れば、患者様第一と考えられてる人たちと仕事ができるような環境に移りたいんです。」
いつもならお会いしても仕事の話ばかりなのですが、F先生と話していると、デパ地下のおいしいお店の話や血液型占いの話など、次々と楽しい話がでてくる。そのような会話の中、『同じ女性の気持ちなら理解しやすいでしょうし、女性の患者様と向き合える機会の多い美容皮膚科に転職しませんか?』と、提案した。すると、「前から興味のある分野でもあるし、チャレンジしてみたいです!」
私と先生の考えが一致した。
半月後、20代から40代まで幅広く支持されているエステを併設されたクリニックに先生をお連れした。
院長先生も大変お忙しい方で、面接時間はわずかに1時間足らずだったが、F先生はクリニックにも院長先生にも大変好感をいだかれた。院長先生はF先生の美容皮膚科としてのスキル面で多少の注文はつけられたが、人柄の良さを買われクリニックを後にするとき、「F先生一緒にやっていきましょう。」 と、本当にありがたいお言葉をいただけた。
『F先生、院長先生は先生を採用したいと考えられてます。あとは先生のお気持ち次第ですよ。』
私は、自信を持って提案した美容皮膚科の求人だったが、F先生から返ってきた答えは思ってもみないものだった。