自分らしい働き方(上)
2012年2月15日 コンサルタントH
F先生が当社に登録されてきたのは、昨年の夏だった。F先生は40歳代女性で大学医局に所属する形成外科医。当社にご登録されている先生方の中でも、形成外科医は非常に少ない為、珍しいなと思いつつF先生の経歴を確認すると、派遣先では形成外科医として勤務されてきたが、現在の病院に異動されてからは、美容形成外科を担当されていた。
当社にご登録されている形成外科の先生方は、退局後、報酬の良い美容クリニックで活躍している方も多い為、民間の美容クリニックへの転向をお考えかなと想定しながら、詳しいご希望をお伺いする為、F先生に面談依頼のメールを送った。
F先生からのメールには、現在の医局派遣先では美容形成外科を担当しているが、F先生の希望は形成外科であり、このまま美容形成外科医としての勤務が続くのであれば、転職を考えたいという内容だった。そのメールの文面からは丁寧で礼儀正しい人柄が感じられた。そして、翌週に面談の約束を頂き、私はお会いする日を楽しみにしながら求人を探すことにした。
しかし、形成外科の求人は他科と比較して極端に少なく、求人があったとしてもほとんどが美容形成外科の募集で、形成外科の求人は皆無に等しかった。ようやくF先生の通勤可能な範囲で、関東の中規模病院A病院を見つけることができた。A病院では糖尿病患者が多く入院している為、アンプタ(四肢切断)の処置が可能な形成外科の先生を探していた。
面談当日、F先生はこれまでの経歴や経験などをお話された。
大学医局に所属してから約20年、これまで形成外科医として勤務され、外傷・熱傷など形成外科の基本的な疾患はもちろん、顔面外傷や難治性潰瘍などの難症例も数多く経験し、形成外科医としてオールマイティに対応されてきた。また、研修先で救命救急を3年間されていたとの事で、明るく優しげな雰囲気の印象とは異なり、手術を得意とし、ハードな勤務もこなす先生であった。私は用意していたA病院の求人をご紹介すると、F先生は「形成外科の求人は少ないんですよね。他の紹介会社にも登録していますが、実際に紹介があったのは初めてです」と大変興味を持って頂き、勤務内容や待遇面を説明すると、「アンプタ手術も得意ですので、是非面接を受けさせて頂きたいです」とその場で面接の了承を頂けた。
帰社後、早速A病院に連絡を入れた。F先生の話をすると、是非面接に来て頂きたいとの回答があったが、院長先生のスケジュールが取れず、面接は翌月になるということだった。F先生にその旨を伝え、面接予定日を待った。
ところが、F先生との面談から2週間ほど経った日、F先生の勤務先で急な退職者が出た為、多忙につきしばらくはA病院の面接に行けそうにないと連絡が入った。
A病院に再度、面接の日程調整をお願いしたが、たまたま同時期に、院長先生の知人から面接の依頼があり、募集は打ち切られてしまった。
F先生にこの事実を伝えると「今回はこちらの都合で面接にお伺いできず、残念ですが仕方ありません。ご迷惑をお掛けしました」と気を落とされたようだった。ご自身の責任ではないにも関わらず、私に謝られるF先生に申し訳ない思いで一杯だった。
何としてもこの状況を挽回したいと意気込んではみたものの、形成外科の求人は非常に少ない。A病院の求人がなくなって、F先生への求人紹介は振り出しに戻ってしまった。仕方なく通勤圏内の医療機関に一つ一つ当たっていったが、この時点でF先生にご紹介できる求人は見つからなかった。
すっかり手詰まりとなっていたところに、一本の電話が入ったのは9月も終わりに近づいたころだった。