ドクター転職ショートストーリー

「ひとこと」に込める強い思い(上)

2014年03月15日 コンサルタントM

A先生は60台前半の男性医師で、スーパー救急を含む精神科急性期から、認知症病棟の管理や精神科リハビリテーションまで、精神科領域の幅広い経験をお持ちの精神保健指定医であった。先生は5年程前に当社へ転職相談でご登録頂いたDrで、その際はご家庭の事情のため転職活動は一旦中止され、現病院での継続勤務に至っていた。

日々の業務活動の中で、ご登録を頂いている先生方へ転職希望の意思確認の電話連絡をしていた時に、A先生に架電したが当然のごとく直ぐには繋がらなかった。別の先生へ架電しようとした矢先にA先生より折り返しお電話を頂いた。非常に唐突ではあったが、A先生に転職の意思確認をしたところ、先生の方から転職相談の面談希望のお話が出たのは我ながら驚いた。転職を決意されたのは、認知症の担当患者が増えたことと、現在の勤務体系にマンネリを感じていることが理由で、基本的なご要望は精神科急性期医療、週4日勤務、当直週1回可で税込年俸1,300万円ということであった。

電話でお話した際に先生が愛煙家であることを聞いていたのでの喫煙スペースのある喫茶店でA先生と面談の場を設けることになった。当日の私の先生に対する第一印象は、精神科医師特有の観患療法の経験による、目力があり、全てを見通している様な、存在感あるDrでした。精神科医は患者のケアのみならず、患者を支える家族と向き合って治療方針を決め、長く付き合う職業である。現にA先生を慕い前勤務先から診られている患者も多く、次の転職先でも、自分を頼ってくれる患者がいれば、転職先で診ていきたいとのご希望もあった。

面談前にDrの希望条件を電話でヒアリングした上で、面談時に、希望条件を再確認し、事前に用意していた求人に興味を持って頂ける様、詳細説明を行うのが、通常の流れである。しかし、A先生からの希望条件の中で私が一番困惑したのは「喫煙場所が院内にあること」の一言であった。A先生に提案する予定であった10件の求人の内、私の中で最もお勧め求人であったK病院の求人は、禁煙外来を行い、施設内一切喫煙禁止というものであったからです。

 面談終了後、精神科求人を探したが、A先生のご希望に副える求人案件を探しきれない状況が続いた。A先生とお会いしてから1週間が過ぎようとしていた頃、大阪市内にあるT病院より精神科の急募案件のお話を頂いた。早速この求人詳細をA先生にご案内したところ、来年度より病院を建て替えると同時に認知症などの療養型から急性期の患者を受け入れる体制をスタートさせるという情報に興味を持って頂き、ご面談、ご見学の機会を設けることになった。しかしながら、面談終了後にT病院は、建て替えと同時に急性期患者を受け入れるのではなく、今までの療養型を保持しながら、亜急性期の患者を受け入れる体制で再スタートする方針で、A先生のご希望とは異なる医療機関であった。

次へ続く

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