病院の特色
「高知医療センターの特徴の一つに、医療局、看護局、薬剤局、栄養局、医療技術局、事務局の六局体制があります。医療は、医師や看護師だけではなく、管理栄養士、薬剤師、レントゲン、リハビリ関係など、多彩な専門職が関わって成り立っています。様々なスタッフは、医師と看護師の下にあるものではなく、それぞれが並列した立場でそれぞれの専門職が、専門の知識を使ってチーム医療を推進しようという考え方を意味しています。チーム医療を行ううえで上下関係はないことをはっきり示していると思います。
また、6局体制に加えて、6センターの機能を備えています。」
1. 救命救急センター
救命救急センターは、2005年3月に開設され、救命救急センターを中心に、救急専門医が各科医師と連携を取りながら、患者さんの診断治療を行う専門施設である。2011年3月に運航を開始した高知県ドクターヘリ事業の運用により、東西に広い高知県の全域を片道30分以内で重症救急患者を搬送することが可能となった。導入後は、地域の病院では対応困難な重症救急事例に対する救急・集中治療の提供を行っている。また、高知県で災害時の医療の中心となる「基幹災害拠点病院」にも指定されている。
「救命救急センターは、開院時からありまして、一次から三次までの全てを受け入れています。ドクターヘリ基地施設も整備し、基幹災害拠点病院にもなっています。高知市内には3つの救急救命センターがあり、高知医療センターとしては三次救急に特化すべきではないかということで、三次救急に特化した時期もありましたが、三次救急の数や、二次救急が他の2つの病院に集中しすぎたことから、体制を見直しました。今年、救命救急センター長も代わり、やはり救急車を全て受け入れ、一次から三次まで全てを受け入れるよう方針に変えて、頑張っているところです。」
2.循環器病センター
循環器病センターは、心臓血管外科と循環器内科が一体化できるのが最大のメリットである。患者さんにとって最良の治療法を選択し、より高い治療効果を目指し、心筋梗塞や不整脈のカテーテル手術など、新しい分野の循環器の治療にも力を入れている。緊急を要する循環器疾患には24時間すぐに対応できる態勢を整備しており、術後などのベッドサイド・リハビリテーションにも取り組むことにより、患者さんの早い社会復帰に努めている。
「循環器病センターは、循環器内科と心臓血管外科が担当しています。循環器内科では、日帰りのカテーテル検査も始め、地域に出向き、地域住民の方への勉強会を非常に積極的に行っています。CCUは、現在は救急ICU内に4床ありますが、独立したCCUとして6~8床を検討中です。心臓血管外科は、腹部・胸部大動脈瘤に対するステント手術を年間約60件行っており、県内では最も症例数が多いです。その実績を基にハイブリッド手術室を計画しています。医師のモチベーション向上という意味でも、実行したいと考えています。」
3. がんセンター
がんセンターは、地域がん診療連携拠点病院として、がん診療を充実、発展させている。関連診療科はもとより、全ての職種が協働してチーム医療を推進しており、身体に負担の少ない手術、インターベンション治療(IVR)を積極的に提供し、抗がん剤、放射線治療にも力を入れている。また、緩和ケアチームを中心に緩和ケアにも取り組んでいる。
「がんセンターは、腫瘍内科、放射線科、放射線療法科を中心に外来化学療法は各科が担当しています。現在、がんの治療機器類の更新の時期に入っていまして、がんセンター在り方検討部会をつくり、外来の化学療法室などもさらに充実させるべく検討中です。当院も手狭になってきていますので、別棟を建ててがんセンターを移し、再構築するという案の検討もしています。」
4.総合周産期母子医療センター
総合周産期母子医療センターは、高知県の周産期医療の中心となるセンターとして、ほかの周産期施設と連携して周産期医療を守り、推進している。また、高知県の周産期医療に従事する全ての職種のレベルアップのために研修事業を行っており、MFICU(母体胎児集中治療室)やNICU(新生児集中治療室)で母体や新生児の高度医療を行いながら、母児同室やカンガルーケアなどの優しい医療にも力を入れている。
「NICUが今年3床増床して12床、GCUが12床あり、NICU、GCUはほぼ満床に近い状況ですね。昨年、NICUが一杯で、重症の新生児の対応が高知県内でできずに患者さんを県外に送ったということがありました。そこで、高知県もかなり重点をおき、3床の増床となりました。今後、産科病床も8床増えます。NICUは高知県内では、当院と高知大学医学部附属病院にしかありません。市内の産科の医院、分娩を扱っている病院が少なくなっており、当院と大学病院に患者さんが集まってくるようになりました。この3月まではハイリスク妊婦のみと入院制限をしていましたが、市内の病院がかなり閉めているので、私どもとしてもハイリスクしか受け付けないということになると産科医療が破綻してしまいますので、病床数を増やして、正常分娩もできるだけ受けようという方針です。ハイリスクばかり受けていますと、入院期間がどうしても長くなりますので、年間の分娩件数が少なくなってきます。産婦人科医と小児科医の確保という問題もありますが、産科病床を増やして扱える件数を増やそうとしているところです。」
5.地域医療センター
地域医療センターは、地域医療支援病院である高知医療センターが圏内の医療機関と取り組んでいる病診連携、病病連携の未来形としての「広域チーム医療」の先頭に立っている。
地域医療センターは「地域医療連携室」と「まごころ窓口」で構成されている。「地域医療連携室」は地域医療機関との対応窓口、「まごころ窓口」は患者さんやご家族との対応窓口である。
「本来の意味での地域医療センターは、地域医療連携室といいますが、トップは医師で、その下に看護師、医療ソーシャルワーカー、医療事務のスタッフがいます。他の医療機関との連携が必要ですので、『にじ』という広報誌を配布するほか、病院長の私と地域医療連携室のメンバーが県内の郡の医師会に毎年1回は必ず行って、医療センターの説明をし、地域からの要望などを聞くようにしています。患者さんの紹介をしてくれている医療機関に医療ソーシャルワーカーと看護師が訪問し、直接、意見を聞く機会も持っています。」
6.こころのサポートセンター
2012年度から、こころのサポートセンターを設置し、精神科・児童精神科を開設、精神科医療を推進している。特に、児童精神科では専門病床を備え、発達障害などの精神疾患で入院が必要な15歳以下の子どもを受け入れている。さらに、児童福祉、教育関係機関とも連携して、児童虐待などにより、心のケアが必要な子どもの診療にも取り組んでいる。
「こころのサポートセンターは、精神科病棟ですが、全部で44床あります。内訳は身体合併症などの手術が必要な成人の患者さんのベッドが30床と、児童・思春期の患者さんのベッドが14床です。身体合併症と児童・は思春期の精神科を特徴として運営してきましたが、残念ながら開設当初5名いた精神科医師のうち2名が退職し、補充ができていない状況です。現在は、入院については児童・思春期の患者さんだけとなっています。」