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「地域とつながり、安心感と温かみのある精神・高齢者医療を」
医療法人社団 研精会 稲城台病院
病院の特色
1.精神科
精神科では、主治医による薬物療法や精神療法を軸にして、患者さんの病状に応じて、様々な治療法を組み合わせている。
対象となる疾患は、統合失調症、気分障害(躁うつ病)、認知症、神経症、パーソナリティ障害などである。
診療方針としては、正確な診断に基づいて、的確な治療法を選択し、患者さんそれぞれの個別性を尊重した治療を展開すること、入院治療が一段落したあとは地域の社会資源と連携し、フォローを行いながら、地域での生活を支援すること、内科医と協力して、身体合併症についてきめ細かい対応を行うことが挙げられる。
また、精神神経学会精神科専門医制度認定研修施設でもある(2020年まで)。
「2015年に認知症治療病棟の開設を行い、東京都認知症疾患医療センターの指定を受けました。国の方針により、認知症治療へのテコ入れを迫られたものですが、やはり患者さんは増えていますね。認知症治療病棟は、認知症に伴う周辺症状などにより自宅や施設での生活が困難になった方を対象に専門的な治療とケアを行う病棟であり、多職種連携により症状の軽減を図っています。また、2016年には外来のキャパシティを増大させました。物忘れ外来や市民講座を行うことで、早期発見・早期治療への取り組みを行っています。」
2.内科
内科療養型病床(7病棟、8病棟)と精神科身体合併病棟(6病棟)で内科治療を行っている。医師数は常勤内科医2人、非常勤内科医3人となっている。
主な診療内容としては、身体疾患のみならず認知症や精神疾患を伴う高齢の患者さんの受け入れ、末期がん、難病、老衰などに対する緩和ケアを意識した管理である。
「特徴としては、精神科が併設されている内科だということです。もともと精神科の急性期病院からがんの終末期の患者さんをお引き受けしてきた歴史もありますし、認知症の症状が強い患者さんがいれば、精神科の医師が内科に出張してサポートしています。私も精神科に出張することがよくありますよ。医局も一つですし、コーヒーを飲みながら、医師同士で話し合っています(笑)。出身大学もばらばらですし、学閥の垣根もありません。相談しやすい環境ですね。カンファレンスには看護師も参加しています。日頃の患者さんの様子は看護師から報告がありますし、看護師を通じて、内科と精神科の医師が連携しています。」
稲城台病院では緩和ケアという名称が定着する前から、認知症や精神疾患を伴う末期がんの患者さんに対し、緩和ケアを行ってきた。内科医ががん性疼痛を含めた症状のコントロールを行い、精神科医が精神的な問題の解決を図りながら、それぞれの症状の緩和に努めている。稲城台病院への入院の相談にはソーシャルワーカーが窓口となり、患者さんやご家族に情報提供を行っている。
「かつては統合失調症の患者さんの看取りを行える病院がなかったんです。そのため、以前の副院長が熱心に取り組んできました。私自身はグループ内の有料老人ホームの嘱託医もしています。この有料老人ホームも東京都の先駆け的な施設です。以前は入居金を払ったのに看取りをしてくれない有料老人ホームがあったりして、問題になっていたんですね。それで当グループで有料老人ホームを開設し、看取りまでを行っています。」
2016年5月より稲城市在宅医療支援病床確保事業にも参加し、2017年には主に高齢者向けの内科外来、内科訪問診療の開始を予定しているほか、在宅で急性増悪した高齢の患者さんなどの受け入れ体制の更なる強化を目指している。
3.心理療法
動作法とコラージュ療法を行っている。動作法の対象は5病棟、6病棟の認知症、統合失調症の患者さんで、4病棟の統合失調症の患者さんには臨床心理士が実施している。身体の緊張を上手に解消することを通じて、心の不安や緊張をほぐしていく心理療法である。
コラージュ療法の対象は5病棟、6病棟の認知症、統合失調症の患者さんである。雑誌の切り抜きを紙に好きなように貼り、自分を癒やしていくものだ。
「このほか、一般的なカウンセリングも行っています。また、医師や看護師も積極的に病棟に入り、チームで関わっています。」
4.作業療法
稲城台病院には約10人の作業療法士が在籍し、外来や入院の患者さんに対し、様々な作業療法を行っている。
また、「Social Skill Training(SST)」と呼ばれる生活技能訓練も行っている。これはグループの中で具体的な役割を演じながら、コミュニケーションの練習をするものだ。
「新館には体育館のように広いスペースがあります(笑)。そこで作業療法を行っており、生活技能訓練のほかにも、患者さんやご家族のご要望に沿った、生活に役立つプログラムを提供しています。最近は精神科の合併症や認知症にシフトする病院が増えてきましたが、当院では15年以上前から認知症を伴う身体疾患を診てきた積み重ねがありますから、質の高い療法を行えていると自負しています。患者さんの退院後も外来作業療法で、入院中と同じ内容のサポートをしています。」