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神田駿河台で130余年、
地域とともに杏雲堂病院

病院の特色

1.「このがんなら杏雲堂」

 杏雲堂病院は「このがんなら杏雲堂」をキャッチフレーズに、がん診療に力を入れている。この背景に佐々木研究所での医学研究があることは言うまでもないが、2009年には腫瘍内科を立ち上げている。腫瘍内科はがん診療の中で薬物療法を担う診療科であり、がん医療全般のコーディネートを行っている。杏雲堂病院では緩和ケアやがんの薬物療法の開発に向けた研究にも取り組んでいるほか、「杏雲堂がん何でも相談室」を開設し、杏雲堂病院に受診歴のない患者さんやご家族からの相談も受け付けている。

 「国立がんセンターの名誉総長である杉村隆先生がかつて附属佐々木研究所におけるがん研究に関与されていたこともあり、そのご縁で国立がんセンターからの紹介患者さんが月に何人かいらっしゃいます。腫瘍内科の常勤医師2人も国立がんセンター出身ですし、来年にはもう1人増員となります。当院の診療科でがん診療に強みがあるのは腫瘍内科のほか、婦人科と肝臓内科ですね。」

 婦人科は坂本優副院長を中心に、週に4、5例の手術を行っている。悪性腫瘍(浸潤がん)に対して、根治性を維持しつつ、可能な限り機能温存と妊孕性温存を目指している。杏雲堂病院はエキシマ・ダイ・レーザーを用いた光線力学療法を子宮頚部病変の治療に用いた本邦で最初の病院である。

 「子宮頸がんは若い20代、30代の患者さんが多いですね。子宮頸がんに対する広汎性子宮全摘出術では膀胱機能の回復が早い骨盤神経温存手術をできる限り行っています。開腹手術で子宮悪性腫瘍手術を施行していますが、3Dハイビジョン内視鏡システムを用いて、早期子宮体がんに対しては腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術を開始しています。」

 また、子宮頸がんに対する根治性と妊孕性温存を兼ね備えた広汎性子宮頸部摘出術も導入した。これまで広汎性子宮頸部摘出術を18例施行したが、術後3例が妊娠し、3例全てが無事に出産に至っている。

 肝臓内科にはほかの病院で治療困難と言われた難治肝臓がんの患者さんが多く紹介されており、治療を断ることはない。その姿勢からか、肝臓がんの治療件数が全国2位の実績を誇っている。肝臓内科をリードしているのは佐藤新平科長である。佐藤科長は肝臓がん治療のメッカである東京大学医学部附属病院消化器内科で学び、これまで2000人以上の患者さんにラジオ波焼灼療法を行ってきた。
ラジオ波焼灼療法はがん組織に挿入した直径1.5ミリほどの電極にラジオ波を流して、腫瘍を誘電加熱し、壊死させる治療法である。杏雲堂病院での特徴は「無痛ラジオ波焼灼療法」で、静脈麻酔により患者さんが眠っている間に治療が終わるものだ。痛みがなく、合併症もほとんどないため、患者さんから好評である。このほか、進行性肝がんには肝動注療法も行い、良好な成績を上げている。「ラジオ波焼灼療法」は非常に特殊な治療法です。当院では2015年度が83例、2016年度が99例となっている。

 2人に1人ががんになり、そのうち6割の方が亡くなっている時代ですから、当院でも8階の個室病棟を改装し、まもなく緩和ケア病棟を立ち上げます。緩和ケアに興味がある看護師も増えてきましたので、がん診療をさらに充実させていきます。2017年中に病院機能評価を再受審するのですが、2018年春には専任の医師も来ますので、正式に施設基準を満たすことになります。
 

2.一般診療

 内科は日本大学医学部内科学系から全面的なサポートを受け、リウマチ科が充実している。杏雲堂病院はかなり早い時期からリウマチ科を標榜しているため、親子2代に渡る患者さんも少なくないという。

 「当院が所属する区中央部医療圏は千代田区、中央区、港区、文京区、台東区で構成されていますが、特に千代田区は診療所の密度が東京で一番高いんです。人口10万人当たりでは東京都全域の平均の約3倍となっており、開業医間の競争はかなり激しいと推測されます。そのため、当院が外来診療に力を入れてしまうのは病診連携を強化する観点からは得策ではありません。したがって、外来診療に関しては専門性の高い領域に特化していきたいと考えています。」

 整形外科は2018年春に常勤医師が2名赴任し、膝関節などの手術が可能になる予定だ。
 

3.地域包括ケア病棟

 2014年12月に誕生したのが地域包括ケア病棟である。44床を有し、急性期治療後のリハビリテーションや在宅復帰に向けた医療や支援を行っている。地域包括ケア病棟の入院期間は60日まで可能であり、在宅復帰をスムーズに実現するために、主治医、看護師、薬剤師、リハビリテーションのスタッフ、医療ソーシャルワーカーなどの多職種が協力し合っている。
杏雲堂病院の特徴の一つにリハビリテーション科が挙げられる。在宅復帰を目指すにあたって、リハビリテーションは不可欠であるが、杏雲堂病院には理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が計14人在籍している。がんのリハビリテーションにも注力し、患者さん一人一人に合わせたプログラムを提供している。リハビリテーション訓練室は最上階である9階に位置しているため、眺めが良く、患者さんからも喜ばれている。

 「当院の近くには東京医科歯科大学医学部附属病院、日本大学病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院があり、東京大学医学部附属病院も歩いて15分ほどです。三井記念病院や東京逓信病院といった大きな病院もあります。大病院にはブランド力を活かした強力な集患能力があり、入院患者さんの大半が二次医療圏外から流入しているのです。その一方で、この医療圏に居住する住民の半数以上が圏域外の医療施設に入院していますので、地域包括ケア病棟は当院が地域に貢献するために作った病棟です。現在は東京医科歯科大学医学部附属病院、東京大学医学部附属病院、日本大学病院、日本大学医学部附属板橋病院、東京逓信病院と提携して、患者さんをご紹介いただいています。特に、東京医科歯科大学医学部附属病院整形外科からは多くのリハビリの患者さんのご紹介をいただいています。」

「地域包括ケア病棟にはもう一つ、在宅や施設で暮らしている高齢者の方が肺炎や心不全の悪化などで緊急に入院が必要になった場合の、受け皿としての役割があります。この役割を発揮するためには、地域包括ケアシステムの中で当院がハブとなる病院として機能することが重要であり、そのために地域包括支援センターや訪看ステーションとの連携強化を目的とした「症例検討会」を定期的に開催しています。」

2017.11.01 掲載 (C)LinkStaff

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