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神田駿河台で130余年、
地域とともに杏雲堂病院
院長メッセージ
私は聖マリアンナ医科大学で総合診療科の立ち上げに関与し、総合診療医の育成に携わってきました。しかし、大学には講座制の壁があり、十分な成果を挙げられなかったことには内心忸怩たる思いがあります。わが国では医療の専門化、細分化が進む一方で、高齢化の進展にともない多くの疾患を同時に抱える高齢者が増加してきています。日本の医師育成システムの大きな問題は、このような人口構造、疾病構造の変化に対応した医師養成の仕組みが確立していないことです。
私は2001年に欧米の外来診療の実態を調査する機会がありましたが、イギリスはGPによるプライマリ・ケアの仕組みが非常に充実しています。6割のイギリス国民がNHS制度を自国の誇れる制度であると評価しているんですね。日本の医療制度にはこの一次医療の仕組みに大きな課題があるといえます。
今後は疾病構造が変化し、複数の疾患を持つ高齢者が増加します。「この病気は私がみますが、その病気はあちらの病院に行ってください」では医療制度が保ちません。そこで総合診療医が必要になります。特に地方の病院は総合診療医を望んでいますが、総合診療医を育てる風土が今までの日本にはなかったのです。現在、日本病院会ではアメリカのような病院総合診療医(ホスピタリスト)の育成に取り組み始めました。当院も申請する予定です。当院育ちの総合診療医が活躍してほしいと願っています。