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「キュアとケア」
一般財団法人育生会 横浜病院
運営・経営方針
1.運営・経営方針
横浜病院ではグッドバランス賞の「継続賞(シルバー賞)」を受賞した。これは横浜市が働きやすい職場環境づくりを積極的に進める事業所を「グッドバランス賞~働きやすく、子育てしやすい中小企業~」として認定しているもので、横浜病院は2009年度、2011年度、2012年度の3回認定されたことで「継続賞(ブロンズ賞)となり、2013年度、2014年度も認定されたため、「継続賞(シルバー賞)」となった。
「育生会という名前が示すように、お子さんのいる職員への配慮をしています。院内保育所があることで入職する職員もいますし、お子さんも一杯になってきましたので、拡充を検討中です。講堂で昼寝をしているお子さんの姿も見られますよ(笑)。」
2014年の診療報酬改定では療養病棟での一定の在宅復帰率などの実績を評価する項目が新設された。大学病院などの急性期病院の退院は在宅復帰率80%以上が必要とされる基準があり、急性期病院から横浜病院が取得した「在宅復帰機能強化加算」の療養病棟に転院させると、在宅扱いとしてカウントされる。横浜病院ではさらに2016年に一般病床の大部分を地域包括ケア病棟に転換したが、これも在宅扱いとなる。
「当院では地域包括ケア病棟で60日を過ぎた患者さんを2階の療養病棟に移し、加算を取っています。これで70%の復帰率を確保していますが、2018年の4月からこれが通用しなくなるため、一般病院とも連携し、急性期後の患者さんを積極的にお受けしようと考えています。急性期病院は地域に繋がりにくいところがありますが、当院は地域に密着し、急性期後の患者さんをお受けして、地域にお帰ししていきます。地域の高齢者の方々を当院が救っていきます。その一方で、レスパイト入院も進めます。地域の方々に必要だと思っていただけることが経営の根幹です。地域のためにという理念をより一層、浸透させていきたいです。」
2.地域医療
年に1回の育生会フェスティバルなど、横浜病院では地域に密着している行事を多く開催している。
「育生会フェスティバルではモノレールのごんたんが乗り放題になります(笑)。記念乗車証も発行し、制帽をかぶっての記念撮影も行いました。また、最近は東京芸術大学の器楽科の皆さんによる四重奏コンサートも開催しています。院内放送でアナウンスして、患者さんのご家族の皆さんにも楽しんでいただいています。桂歌助師匠による院内落語も好評です。職業体験や認知症講座も開催しています。これからもこういったイベントを通して、地域に開かれた病院を目指していきたいですね。」
高齢者雇用に関しても、横浜病院は先進事例となっており、営繕の職員やモノレールや訪問診療のための車両の運転手として、高齢者雇用を進めている。
また、保土ヶ谷区地域連携担当者会議の存在も地域連携を支えている。
「保土ヶ谷区にある横浜市立市民病院、横浜保土ヶ谷中央病院、聖隷横浜病院、イムス横浜狩場脳神経外科病院、当院の5病院が連携しています。院長同士の仲も良いので、保土ヶ谷区は役割分担がよく機能できていると思っています。訪問診療の医師もこの連携をうまく利用してくれており、当院も訪問診療の医師によるフリーベッドシステムを整備しています。こうした流れを今後も活性化していきたいですね。」
3.今後の展開
超高齢社会を支える中心の一つになっていきたいです。高齢者はますます増えていきますし、認知症や孤立化の問題もクローズアップされています。私もいわゆるごみ屋敷のようなお宅に伺うこともあります。バリバリ仕事をしていた男性が定年後に妻を亡くした途端にふさぎ込んでしまったりしているんですね。当院では訪問看護などの機動部隊がそうした高齢者を見つけて入院させ、必要な医療を施したのちに帰っていただくという取り組みをしています。今後は病院だけでは解決しないことに地域として力を入れたいです。地域の方に安心して暮らしていただくためには医療者だけでなく、地域プラザのケアマネージャーさんの協力も不可欠です。昔は自治体の中に町内会があり、盛んに声かけをし合っていましたが、戦後は地域社会が弱くなってしまいました。そこでケアマネージャーや訪問看護のスタッフが状況を確認していく必要があります。人は人と結びついて生きていきているのですから、医療を通じて地域コミュニティを活性化させたいと思っています。