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いのちへのまなざし

運営・経営方針

1.運営・経営方針

 森下院長に運営や経営方針について、尋ねた。

 「私が院長になったときはそれまでにあり方を変えるチャンスでした。それまではトップダウンで決まったことを通知している、密室で決められているという不満があったようですので、私は過去の実績や経営状況を全て、詳細に『見える化』しました。赤字の状況や診療科の売上までデータを見せて、一緒に考えよう、私も決めるときは決めるけれども、あなたたちも意見を出してねということです。そのためにはデータを共有しないといけないので、着任後3カ月ほどは資料作成に追われました。職員もこの状況をどうしたらいいのかと考えるようになりました。少しずつ、こちら側の提案を理解してもらえるようになり、風土的なものが変わった気がします。病院を自分たちからの目線ではなく、地域の方々からの目線で変えていこうという雰囲気になっています。どうしたら地域のニーズに応えられる機能を持てるのかといったプランを出し数値目標を掲げました。2018年度はようやく目標としていた実績に達しました。低迷していた実績が2年7、8カ月で回復したのですから、意外と早かったと思います。」
 

2.地域連携

 森下院長に地域包括ケアシステムへの取り組み、紹介率向上のための取り組みなど、地域連携について、伺ってみた。

 「『地域多機能型ハブ病院』というアドバルーンを揚げました。当院の目指す方向性は基幹病院ではなく、ハブ空港のような乗り継ぎ機関です。ハブ空港と同じように、ハブ病院の特徴は患者フローが円滑で、おもてなしの心がある居心地の良さがあって、そして繰り返し利用したくなることです。来院された患者さんが迷いそうなときにきちんと声をかけて応えてあげることが大事です。入院された患者さんは退院後にどこに行けばいいか、決まっていない方が多いです。在宅ばかりではなく多くの選択肢の中から本人・家族とともに方向づけをして、限られた時間の中で何とかふさわしい場所を見つけています。
 そのために大事なのが地域連携の強化です。当院は名古屋第二赤十字病院を始め3つの大規模病院に囲まれた中心部に存在します。まず第一に急性期の機能を維持して軽症急性期患者の二次救急医療を担うことで、高次医療機関の入り口制限を緩和できます。また、超急性期の初期治療を終えたがまだ不安定な患者、複数の疾患や合併症を有する患者の受け入れる急性期機能をもつ医療機関が周辺には少ない。当院の患者受け入れ許容域を拡大して高次医療機関の出口を円滑にすることも重要な任務です。次に在宅医療の支援です。この地区にはがんや高齢者に対応する非常に多くの在宅クリニックがあり、本院はバックアップ病院としての役割を果たす必要があります。聖霊病院では地域包括ケア病棟(回復期機能)以外に、内科系一般病棟(急性期機能)の一部を用いて、患者さんの疾患・病態やステージに適合する病棟を選択して受け入れています。急性期機能を持つ病院だからできる柔軟なベッドコントロールといえます。
 2019年4月に目玉となる人材に来てもらいました。もとは名古屋第二赤十字病院の看護師さんだった方ですが、これまで長い間この地域の要的存在として病診、病病連携を牽引してきました。病院内外の患者フローの整備がますます促進されるよう期待しています。
 

3.今後の展開

 当院設立時の理念「いのちの始まりを大切に」に則り、「お産の聖霊」として地域住民に知られてきました。周産期医療は少子化の中にあって今後トータルとしての需要は減少していくが、ハイリスク分娩や双胎児の比率の上昇がみられ、総合周産期母子医療センターの補完的役割は今後とも重要と考えます。
 地域多機能型病院の「補完する」という使命は決して容易なことではありません。近隣医療機関の動向、地域医療需要や住民意識の変化を把握して充足できていないところに手を差し伸ばし「面」として支える、その遂行をまさにカトリック病院としての理念である「愛と奉仕」が支えることができるのではないだろうか。
 病院経営上の視点からすれば病院の持続可能性と必ずしも結びつかない中であえてこの補完的役割を担う覚悟を職員一人ひとりが持つことが大切だと思います。

2019.07.01 掲載 (C)LinkStaff

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