運営・経営方針
1.運営・経営方針
山陽病院では医師確保に力を入れている。精神科に興味を持つ医師は増えてきたが、いわゆるリスクは少ないのだろうか。
「確かに外科に比べれば、リスクは圧倒的に少ないですが、外科にないリスクはあります。例えば自殺です。それに副作用の強いお薬もありますから、それを使うとなるとやはりリスクが高いです。リスクがないというのは無責任な考え方ですし、どんな患者さんでも諦めずに治し続ける覚悟が医師には必要なのです。治療行為の結果が早い科だとリスクが急激に来ますが、精神科は治療時間が長く、長い時間をかけて追いかけますので、リスクが間延びしているだけなのです。トータルで見ると、リスクはあります。診療期間とリスクの大きさは反比例するのではないでしょうか。その間は同じリスクの負荷がずっとかかり続けるのだと思います。」
精神科には転科してくる医師が多いが、山陽病院にも他科から転科してきた医師がいる。
「今の常勤医師のうち1人が転科してきた人です。以前、勤務していた人の中にも泌尿器科の医師だった人がいました。身体を壊して、手術ができなくなったということで、転科して、当院に来た人もいます。一般的な診療科ですと、問診をするけれども、明確な検査データがあり、それで病気を診断しますが、精神科はどちらかと言うと、患者さんの問診を聞き、さらに、こちらから突っ込んで聞いていきます。その中で精神病理をどれぐらい見出だせるのかが診断のポイントです。検査もしますが、この検査は除外のための検査でしかないので、確定はできません。統合失調症やうつ病を診断する検査データがあるわけではないのです。あくまでも患者さんの生活や病気、今の状態をきちんと診ながら、話の内容を理解して聞いていくことをやっていくので、そこが一般的な診療科とのギャップです。聞き取りをしながら、この病気がどういう精神病なのか、この人の訴えはどういう精神科の専門用語に置き換えられるのかということです。患者さん本人が言っているだけ以上の証拠がないのです。その訓練をしないとできるようになりません。当院では私だったり、理事長だったりがマンツーマンで指導しています。1年ぐらいである程度はできるようになりますよ。」
若い医師を採用するにあたっての取り組みも伺った。
「とにかく教えてあげられることは全て教えてあげるというのが私のスタンスです。知識は古びますが、私たちが教えてあげられることは教えてあげます。知識を自分だけで隠し持っていても仕方がないという思いがあります。」
2.地域医療・医療連携
中島院長に地域連携や医療連携について、伺った。
「病院からの紹介患者さんはもともと多いのですが、最近は救急や飛び込みでの患者さんも受けるようになったので、当院に直接、来られる方も増えています。どこの病院とも仲が良いので、紹介し合うのに問題はありません。会合に出席するなど、普段からコミュニケーションも多く、他病院との連携は取れています。私は今、岡山県の精神保健福祉協会の理事をしていますので、色々な病院や業種の人が集まって会議をしたり、精神障害者スポーツ大会などを開催したりもしています。そういった活動を経て、岡山県の病院同士だという繋がりができてきました。」
紹介率に並び、逆紹介率も高いことが山陽病院の特徴である。
「当院の患者さんが転んで骨折をしたり、頭を打って出血したり、腸管炎や胆石などになったりすると、総合病院にお願いすることは多いです。関係性が良いので、断られることはありません。他院の患者さんがいらっしゃると大変なのですが、逆に患者さんをお返しするときも快く受けていただいています。」
3.今後の展開
当院の位置づけは高齢者と合併症を診る病院だということです。このポジションをきちんと維持して、合併症を持った患者さんを診る病院であり続けたいです。一方で、これからは若い方の中に精神疾患ではないけれども、精神的に病んでいる方が増えるはずです。うつ病でもなければ、統合失調症でもない患者さんをしっかり診ることのできる病院を目指していきたいです。現代は心を病む方も増えていますし、発達障害も身近な言葉になってきました。その人の持って生まれた特徴を活かしながら、その人らしい生き方を導いてさしあげたいと思っています。